京都府議会 2016-12-01
平成28年12月定例会(第2号) 本文
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ウィンドウで開きます) 平成28年12月定例会(第2号) 本文 2016-12-05 文書・発言の移動 文書 前へ 次へ 発言 前へ 次へ
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発言者一覧 選択 1 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 2 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 3 :
◯村田正治君 選択 4 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 5 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 6 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 7 :
◯村田正治君 選択 8 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 9 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 10 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 11 :
◯平井斉己君 選択 12 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 13 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 14 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 15 :
◯平井斉己君 選択 16 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 17 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 18 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 19 : ◯教育長(小田垣勉君) 選択 20 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 21 :
◯平井斉己君 選択 22 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 23 : ◯堤淳太君 選択 24 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 25 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 26 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 27 : ◯堤淳太君 選択 28 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 29 : ◯副議長(巽昭君) 選択 30 : ◯岸本裕一君 選択 31 : ◯副議長(巽昭君) 選択 32 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 33 : ◯副議長(巽昭君) 選択 34 : ◯岸本裕一君 選択 35 : ◯副議長(巽昭君) 選択 36 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 37 : ◯副議長(巽昭君) 選択 38 : ◯岸本裕一君 選択 39 : ◯副議長(巽昭君) 選択 40 : ◯知事(
山田啓二君) 選択 41 : ◯副議長(巽昭君) 選択 42 : ◯教育長(小田垣勉君) 選択 43 : ◯議長(
植田喜裕君) 選択 44 : ◯岸本裕一君 選択 45 : ◯議長(
植田喜裕君) ↑ ページの先頭へ 本文 ↓ 最初のヒットへ(全 0 ヒット) 1: ◯議長(
植田喜裕君) これより平成28年12月京都府議会定例会を再開し、直ちに本日の会議を開きます。
────────────────────
2: ◯議長(
植田喜裕君) 日程に入ります。日程第1、代表質問を行います。
通告により順次発言を許します。
まず、村田正治君に発言を許します。村田正治君。
〔村田正治君登壇〕(拍手)
3:
◯村田正治君 自由民主党府会議員団の村田正治でございます。12月定例会代表質問の先陣を切って、会派を代表して質問をさせていただきます。
まず、今回提案されました12月補正予算案についてであります。
さきの9月定例会では伝統産業を支援するなど第1次緊急経済対策の後、追加提案として、国の補正予算も織り込み、中小企業支援や安心・安全対策など幅広い内容で第2次緊急経済対策を打ち出されるなど、状況に応じて的確に対策を講じてこられました。さらに今回、第3次緊急経済対策として、北部・綾部に産学公連携により、交流型次世代ものづくり支援拠点整備を、また南部・けいはんなにおいて理研との共同研究促進などのための環境整備をそれぞれ進めるための予算を計上されています。いずれも、府内企業を支援するための大事な投資であり、会派を代表して高く評価するとともに、このようにしっかりと将来を見据えて地元企業を積極的に支援する知事の姿勢を心強く思うものであります。地元企業がこれらの拠点を早期に活用し事業展開ができるよう、早期の整備をお願いいたします。このほか、高齢者を中心に生き生きと暮らせる拠点施設整備などの福祉共生対策など、いずれも今必要とされているものであり、高く評価するものであります。
では、最初の質問、平成29年度当初予算の編成についてであります。
来年度は、山田知事4期目の最後の年であります。京都府では、この間、着実に社会経済基盤の整備が進められてきました。この秋には、野田川大宮道路が開通して京丹後市大宮まで高速道路が直結し、京都ジョブパークでは開所以来の就職内定者が6万人を突破しました。また、9月補正予算では安心・安全対策や地域経済対策などの緊急経済対策が措置されており、さらに基盤整備が進展することが期待されるところであります。
しかし、その一方で、昨年の国勢調査によれば、学研都市や京都市で人口が増加したものの、府北中部や相楽東部地域では人口減少が顕著でありましたし、京都府の合計特殊出生率が4年連続で全国ワースト2位となるなど、少子高齢化は進行しています。また、全国的にも生活保護世帯数は過去最悪の水準が続いていますし、9月に発表された所得格差をあらわす代表的な指数である我が国の一昨年のジニ係数が過去最高を更新するなど、残念ながら格差は今なお広がりつつあると言わざるを得ず、これらの課題を乗り越えていくための対策が急務となっています。
こうした中、過日、来年度の当初予算編成方針が示されましたが、その内容を見ますと、軌道に乗りつつある地域創生の取り組みをさらに積極的に進めていくとともに、府民が自分の可能性を実現できるようお互いに支え合う社会の実現に向けた施策に重点的に取り組むとされており、深刻化する格差問題を是正し、府民の安心・安全と府域の均衡ある振興につながる予算が組まれるものと大きな期待を寄せているところであります。
そこで、山田知事にお伺いしたいと思いますが、来年度の当初予算の編成方針の策定に当たっては、「明日の京都」が目指す、誰もが幸せを実感できる希望の京都づくりを具現化することを基本とされたものと考えておりますが、予算編成に当たって特に力を入れていきたいと考えるポイントとその思いなど、知事の基本的な考え方についてお伺いしたいと思います。
一方、予算編成に当たっては、財源の確保も重要であります。府を取り巻く状況を見ますと、社会保障施策を進めていくための財源として見込まれていた来年度からの消費税の税率引き上げが再延長されることに加え、歳出面では、社会保障経費を初めとする義務的な経費は確実に増加する見込みであるなど、引き続き予断を許さない財政運営が見込まれます。また、特に景気の先行きが依然として不透明なことが気にかかるところです。足元の経済情勢は、これまでの府の経済対策の効果もあり、個人消費が底がたく推移し、雇用情勢も改善するなど、全体としては回復する傾向にあるところですが、他方で、海外の政治・経済情勢の動向によって一気に円高や株安が進むなど、為替・株価が不安定な動きをしており、輸出企業を中心に府内経済への影響、ひいては企業からの税収を通じて府の予算編成に与える影響が懸念されるところであります。
さらに国の動向に目を転じますと、8月に総務省が公表した「平成29年度地方財政収支の仮試算」では、景気回復の動向を受けて年々減ってきていた地方財政の収支不足額が再び増加に転じ、これに伴って臨時財政対策債も増加する見込みとなっており、加えて、先般、財務省の諮問機関である財政制度等審議会において、国の財政健全化の視点から歳出特別枠の廃止などにより地方交付税を抑制すべきとの提言がなされたとの報道もあるなど、厳しさが増しており、こちらは全国知事会長としての山田知事の国への働きかけを期待するものであります。税や交付税など、府を含む地方の一般財源の確保について、どのような見通しを持っておられるでしょうか。また、それを踏まえて、年末の地方財政対策に係る国との折衝や府の予算編成にどのように臨もうとしておられるのか、あわせてお聞かせください。
4: ◯議長(
植田喜裕君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
5: ◯知事(
山田啓二君) 村田議員の御質問にお答えいたします。
村田議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして、今回の補正予算案に対しまして大変高い評価をいただき、厚く御礼を申し上げます。
来年度の当初予算編成に当たっての基本的な考え方についてでありますけれども、京都縦貫自動車道など交通基盤の整備が進み、また「海の京都」「森の京都」などの「もうひとつの京都」づくりがしっかりと地に足のついた形で進展する中で、大交流の実現と文化創生により、未来に向かっての京都づくりが、今、進展をしております。
地域創生のほうの交付金も、京都府は2回連続日本一という形になっておりまして、本年3月には文化庁の京都移転も決定するなど、着実にこの分野の成果も上がってきておりまして、雇用状況も悪くございません。しかしながら、その一方で少子高齢化が進む中、人口増の地域と人口減の地域がございまして、経済的にもまだらな状態が続くなど、地域間の問題が出てきております。そして、子どもの貧困問題ですとか、非正規雇用の増大など、全国で格差の問題が深刻化をしております。そうした中で、ヘイトスピーチや相模原市の障害者施設殺傷事件など、非常に悲惨なと申しますか、目を覆うような事件が起きたということも事実でありまして、こうしたことに対して強い懸念を持っているところでございます。
このため、来年度の予算編成に当たりましては、成果が出始めました地域創生の取り組みをさらに加速化させ、京都のビジョンを明確にいたしますとともに、その成果の上に立って、弱い立場の人たちの状況を踏まえ、誰もがお互いに支え合い、ともに生き、自分の可能性を発揮できるという共生社会を目指し、予算編成の重点としたいと考えているところであります。
具体的には、地域創生の前提となる安心・安全をしっかり進め、防災・減災対策や熊本地震の教訓も踏まえたハード・ソフト両面からの地震対策、総合的な治水対策は引き続き講じます。そして、少子化対策としての総合的な子育て支援や、「もうひとつの京都」づくり、文化財の保護・活用の抜本的な強化など、京都の強みを生かした地域創生を展開していきたいと思っております。その上で、共生社会の実現に向け、教育への支援の重点化など、子どもの貧困対策やひきこもり対策、若者や女性、障害者、高齢者に対する就業支援、そして高齢者や障害者に配慮した医療・福祉の総合支援の充実をしっかりと行っていく、こうした人々の共生を実現したいと思っておりますし、それだけではなくて、例えば中小企業においても連携・協働のための「企業の森」の形成、これは補正予算でも新しい支援拠点をつくる予算をお願いしておりますけれども、こうした企業の連携・協働の中で支え合う産業というのをつくっていきたい。そして、環境面におきましても、再生エネルギーの重点化など、環境との再生を図っていきたいといったような、まさに世代を超えて人々が支え合う人々の共生、産業の共生、環境の共生にしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えているところであります。
一方、今後の財政運営についてでありますが、来年度の府税収入につきましては、今年度前半の円高や最近の円安の影響を見きわめるにはもう少し時間がかかりますし、さらに個人消費なども非常に不確定要素が多いという現状がありますので、なかなか現状では難しい状況にあるというのが現実でありますけれども、こうした中に当たっても、地域創生や共生社会の実現などに取り組むために、地方交付税等を含む一般財源の確保が何よりも重要になってまいります。しかし、社会保障財源である消費税率の引き上げ再延期によりまして、京都府では180億円もの影響が見込まれております。また、総務省の試算でも、今年度と同水準の地方一般財源総額が維持されるという形で8月に出されておりますけれども、交付税の原資となる国税の決算剰余金の減により交付税自身が減少し、その影響で臨時財政対策債が4年ぶりに増加するなど、非常に厳しい内容となっております。
京都府におきましても、起債残高増加分のほとんどをこの臨時財政対策債が占めているという大変いびつな、また責任の所在が不明確な状態が続いていることを懸念しております。そして、財務省が最近、国の予算編成に向けて交付税の抑制を主張するなど、非常に楽観できない状況が続いているところであります。このため、私も全国知事会長として先日の全国知事会議におきまして、地域創生こそが一億総活躍社会実現のためのメーンエンジンであり、その実現に不可欠な一般財源総額の確保を総理に強く要請をしたところであります。
今後、大詰めを迎えます国の予算編成や地方財政対策に向け、こうした地方の現状を訴えて地方がしっかりと実力を発揮できるように国に働きかけますとともに、府としても多様な主体との連携によりまして、行政を少しでも無駄をなくすような状況にしていき財源を確保するとともに、府税徴収率の向上など確保した財源を最大限活用し、地域創生や共生社会の実現のための予算編成に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えているところであります。
6: ◯議長(
植田喜裕君) 村田正治君
〔村田正治君登壇〕
7:
◯村田正治君 どうもありがとうございました。私ども自民党議員団も、先月28日と29日に来年度予算の政府要望活動を各省庁にお願いをしてきたところでございます。今も知事のほうから、来年度の編成においても大変厳しい予算になるというような編成方針もるるお話をいただいたところでございますけれども、やはり海と森とお茶、3つの京都の地域の連携、要するにDMOを核にして府域全域への観光客の誘導、あるいは圏域交流、ネットワーク強化を促進、地域の特産品のブランド化など、地域消費者的な機能を強化して、地域の稼ぐ力を創出されますとともに、文化庁先行移転を踏まえて、伝統文化、映像等のコンテンツ、食文化、観光等も連携した新しい文化行政の展開、文化財保護活用の抜本的な強化等の推進に向けて、今もお話がございました地方創生のさらなる展開というものを、ひとつよろしくお願いしたいと思いますし、次代を担う子どもの貧困対策も積極的に推進していただきたいし、またそのためにも、フードバンクやシェアハウスなどの機能をあわせ持つ寄り添い支援のための総合拠点の整備など共生社会に向けての予算など、深刻化する格差問題を是正し、府民の安心・安全と府域の均衡ある振興につながる予算であると思っておりますので、大いに期待をして、次の質問に入りたいと思います。
次に、「お茶の京都」についてであります。
いよいよ来年度は、「お茶の京都」のターゲットイヤーを迎えることとなります。海、森、お茶とそれぞれの地域特性を核に、市町村を巻き込んだ大きな施策展開をして、一大ムーブメントを巻き起こす、これこそが広域的自治体である京都府ならではの取り組みだと感じております。府内市町村に目を向けますと、人口流出や過疎・高齢化により地域コミュニティの存続が危ぶまれるなど、元気をなくしているのが現状であります。私の地元宇治市ですら例外ではありません。昼間は観光客が訪れるものの、夜間にはとても寂しい町となります。道路交通網では、久御山町や城陽市の発展を尻目に、何とも歯がゆい思いをしております。このようなときだからこそ、「お茶の京都」に対する期待も大きく膨らむというものであります。
さて、「お茶の京都」の舞台となります山城地域は、13世紀初めに明恵上人が宇治の人々に茶の栽培方法を教えて以来、茶畑に覆いをかけて渋みを抑えた抹茶の原料のてん茶をつくる覆下栽培や、宇治田原町湯屋谷の永谷宗円による宇治製法(青製煎茶製法)による煎茶の開発、さらに甘みとコクの豊かな玉露の発明など、栽培や製茶技術の革新を繰り返しながら、日本文化の精神性を物語る茶道を支え、生活にも根差した日本の喫茶文化をリードしてまいりました。この800年にわたる歴史の中で、宇治茶の生産、流通から消費にかかわる多くの人々の努力に支えられ、茶園や集落、茶問屋の町並みなどの美しい景観が受け継がれており、平成27年には「日本茶800年の歴史散歩~京都山城」が国の日本遺産第一号に認定されたところであります。日本遺産に認定されて以降、マスコミで取り上げられる機会もふえ、内外から多くの方々が訪れられていますが、さらなる誘客のため山城地域では、日本遺産をテーマにしたパンフレットやマップの作成、標識や案内板の整備などが行われるとともに、日本遺産認定記念シンポジウムを皮切りに、魅力あふれる資産をめぐる各地のイベントをつなぐ「UJI-CHA Fair」が開催され、昨年度は年間13万人が参加されるなど、地域のにぎわいづくりにつながっています。
一方、宇治茶の消費については、核家族化や単身世帯の増加、食の多様化や簡便化などの生活スタイルの変化により急須のない家庭がふえるなど、1世帯当たりの緑茶の消費は年々減少し、平成17年の1,133グラムに対して平成27年には843グラムと10年間で26%も減少するとともに、京都府産の荒茶(煎茶)の単価も平成17年のキロ当たり3,179円が平成27年には2,738円と14%低下するなど、楽観を許さないものとなっております。
このような中で、京都府では、平成18年度から市町村や関係団体と連携し、宇治茶の消費拡大はもとより地域への来訪者をふやすための「宇治茶の郷づくり」が進められ、平成23年度からは宇治茶の文化や価値を人類共通の貴重な宝として継承するため、世界文化遺産登録に向けた取り組みが推進されているところであり、京都府議会といたしましても、私が結成を呼びかけた「京都府議会宇治茶振興議員連盟」に全議員が御参加いただき、宇治茶の振興に努めているところであります。
さらに、「お茶の京都」が来年度をターゲットイヤーとして、山城地域の12市町村を対象エリアに進められており、来春の新名神高速道路城陽-八幡間の開通も踏まえ、宇治茶や茶畑景観等の価値を再認識し、磨きをかけ世界に発信することにより、多くの人が訪れる大交流を創出し、日本の茶文化の一大拠点にするべく、地域の方々が一丸となって取り組まれています。これらの取り組みでは、宇治茶大好きキッズ「茶ムリエ」検定や宇治茶ムリエ養成講座などの事業で、子どもたちを初め、さまざまな層を対象にしたお茶を飲む文化の普及・拡大を進められるとともに、根幹となる茶生産のイノベーションや人材育成を支えるため、来年の秋に向けて茶業研究所の整備を鋭意進めておられるところであり、私といたしましても大変心強く感じているところであります。7月に設立されたお茶の京都博実行委員会では、来年4月のオープニングに向けた首都圏プロモーションとして、10月には東京・大手町においてトークセッションや宇治茶の体験会を開催されるとともに、先月には、東京の丸の内仲通りにおいて「宇治茶BAR」や、江戸時代に240年余りにわたり続けられた「お茶壺道中」の再現などを行い、機運の盛り上げが行われたところでありますが、山城地域を舞台に繰り広げられる「お茶の京都博」はどのようなものになるのでしょうか。私は、一過性のものに終わらせるのでなく、宇治茶の消費拡大や山城地域の振興につなげる視点も必要と考えておりますが、その概要と開催に向けた知事の思いをお聞かせいただきたいと思います。
また、京都府では、11月にパリで発信力のある目きき層へのアピールなどを目的として、宇治茶のアソシエーションを立ち上げ、プロモーションを実施するなど、宇治茶のプレミアムブランド化に取り組まれていますが、今後、「お茶の京都博」の成果や、このようなブランド化を定着させるため、観光地域づくりの中核組織として「海の京都」DMOに引き続き、山城地域でも「お茶の京都」のDMOの設立が必要と考えますが、設立に向けた状況をお聞かせください。
次に、スポーツ施設の整備についてお聞きしたいと思います。
冬季スポーツの季節を迎え、フィギュアスケートの羽生選手やスキージャンプの高梨選手、勢藤(せとう)選手などが活躍している様子がテレビや新聞で連日報道されているところであり、とりわけアイススケートは冬季スポーツの中でも非常に注目される競技になっています。府内のアイススケート場については、以前は、京都市内に高野アリーナや伏見桃山アリーナ、醍醐スケートリンクがあり、子どもたちが気軽にスケートに親しめ、競技に取り組む選手も身近に十分な練習ができる環境があったことから、かつての冬季国体では、幾度となくスケート種目の入賞を果たす強豪府県として活躍していたところであります。特に、世界を目指すフィギュアのジュニア選手たちにとっては、恵まれた環境にあり、私の地元宇治市からも北村明子さん、太田由希奈さん、澤田亜紀さんといった世界で活躍したフィギュアスケート選手が輩出されてまいりました。その後、2005年に醍醐スケートリンクが閉鎖されてからは、府内では、冬季限定で開設される京都アクアリーナはあるものの、夏場に練習できる場所がなくなり、フィギュアスケートやアイスホッケーの選手たちは、練習ができる大阪府や滋賀県、遠くは岡山県のスケート場を借りて、費用と時間をかけ、苦労して競技力の向上に努力されているとお聞きをいたしております。
このような厳しい状況の中でも、フィギュアスケートにおいて、昨年、一昨年の2シーズン連続で全日本チャンピオンになった宮原知子(さとこ)さん、昨シーズン世界ジュニア選手権優勝の本田真凛(まりん)さんや4位の白岩優奈(ゆうな)さんなど、世界や日本で注目を浴びる選手が脈々とここ京都に育っているところであります。しかしながら、こうした選手たちの練習場所として大きな支えになっていた大阪府守口市のアイススケート場も、国の事務事業見直しで2017年3月には閉鎖が決まっており、今後ますます選手たちにとって練習場所の確保や競技会の開催が困難な事態となってくると思われます。また、他府県での練習場所を確保する場合、その府県での選手登録を求められる現状もあり、京都在住の有望な選手たちが他府県に流出するといったことや、何よりもスケートに親しむ府民が減少するという京都のスケート界にとって危機的な事態が現実のものとなりかねず、大変心配しているところであります。
こうした状況から、去る9月9日に京都府スケート連盟と京都府アイスホッケー連盟が、これまで多くの有望選手を輩出してきた府南部地域、特に交通のアクセスがよく、選手が基礎トレーニング等に使用できる運動施設も充実している山城総合運動公園内に、通年型アイススケート場を整備したいという要望書を知事に提出されたところであります。その際には、フィギュアスケートのジュニアグランプリシリーズで活躍する白岩優奈さんも選手を代表して一緒に訪れ、「移動が大変で十分練習できない選手が多いので、練習に打ち込めるよう一日も早く整備を実現させてほしい」という切実な訴えをされ、知事も「府で全て建設するという形にはならないが民間の力もかりながらどういう形で実現できるか検討したい」と整備に前向きな姿勢を示されたと聞いております。この要望が実現し、山城総合運動公園内に通年型アイススケート場ができれば、選手の競技力向上だけでなく、小・中学生が学校行事や地域活動としてスケートを体験し、以前にスケートに親しんでいた愛好者の方も冬場の健康づくりの一つとしてスケートに取り組むことが可能となるなど、府民にとってスケートが身近なスポーツとなり、府民の健康増進にも貢献していくものと思われます。
また、山城総合運動公園にとっても、冬季のスポーツ施設ができれば、四季を通じてスポーツを楽しめるところとなり、公園機能の増進によって利用者の拡大などの好循環を生み出すのではないかと思われます。そして、何よりも子どもたちが地元選手の活躍する姿を見て憧れ、氷の上を自由に滑ってみたい、また練習を積み重ね、世界の晴れ舞台で滑ってみたいという子どもたちの夢や希望を実現する環境を整備することが私たちの務めではないかと考えているところであります。
そこで、お伺いいたします。
府内のスポーツの裾野の拡大や競技力向上に幅広く貢献する通年型アイススケート場の整備の要望に対しまして、現在の検討状況や今後の対応について、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
次に、国際化のさらなる推進についてであります。
グローバル化が進む時代においては、人、物、金の動きが国境を越えて大量、瞬時に移動することから、経済や学術の分野で、国と国との国家間の競争から都市間の世界的な競争時代に突入したと言われております。資源のない我が国において、これからの世界の中で京都が世界的な都市として輝きと活力を保ち、世界の中の都市間競争に打ち勝つためには、国際社会で活躍できる人づくりを含めた地域の国際戦略が必要ではないかと考えております。
京都の特性の一つとして、「大学のまち」「学問のまち」「学生のまち」が挙げられます。この特性を生かして、京都が国際的にその優位性を堅持していくためには、世界中から多くの人が集まり、多様で豊富な「人財」を地域発展の原動力としていくことが重要と考えます。現在、京都府には世界中から年間8,000名近い留学生が来られていると聞いております。大学のまち・京都という特性を生かし、さらに多くの留学生に京都に来てもらい、留学生の力を府の国際交流の推進や活性化につなげていくことが重要であると考えますが、本府の新たな中期計画である「明日の京都」においては、平成30年度末までに府内の留学生を1万人とすることを目標に取り組みを進められており、その達成に向けて、昨年には大学、京都府、京都市、経済界などで留学生スタディ京都ネットワークを設立され、留学生誘致のためのオール京都の体制を整備されたと聞いております。
そこでお伺いいたします。
設立から1年半余りでありますが、この留学生スタディ京都ネットワークのこれまでの取り組み状況、さらにその中でどのような成果が出始めているのか、現在の状況をお聞かせください。
また、京都に来られた多くの留学生の力を生かすためには、勉学だけでなく、京都の歴史や文化を体験し、府民や地域との交流を深めることで京都をより好きになってもらい、府の国際化・地域の活性化に貢献する人材となってもらうことも期待するところであります。私は、若い世代の方が、世界との交流を通じて理解を深め、世界で活躍できる人づくりにつながる交流が大事ではないかとの観点から、地元の東宇治高校とタイ王国の高校との交流事業にかかわりました。そして、その御縁から日タイ親善京都府議会議員連盟を設立し、会長としてタイ王国との交流を進める中で、人と人との触れ合いを通じて見聞を広め、共通の課題を議論する国際交流は、人づくりや地域を超えた国際理解にとって大変必要なものであると再認識したところであります。
2013年に大台の1,000万人を突破した日本を訪れた外国人旅行者数は、ことしは既に2,000万人を超えたということです。これは、政府が進めてきた観光ビザの発給要件緩和に加え、航空路線の新規就航や増便、クルーズ船の寄港増加などで、中国などアジア地域からの旅行者が大幅にふえたことによるものと聞いています。政府はさらに東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開かれる2020年には4,000万人、2030年には6,000万人を目標に掲げています。そうすると、今後ますます京都を訪れる外国人の方々が増加すると思われますし、高速道路網の整備の進展や京都舞鶴港へのクルーズ船の寄港増加を見れば、京都市内だけでなく府域全体で外国人観光客等を受け入れる必要があろうかと考えます。
このような中、受け入れる側の府民も、一人一人が国際理解を深め、おもてなしをする環境がさらに高まることを期待するとともに、世界中から集う観光客、学生、研究者や地域住民など、さまざまな人々の活発な交流の中で、活気と創造性にあふれる京都に結びつけることが必要になるのですが、残念ながら、地域の国際化を一気呵成に進めることは困難であり、高校生の交流事業に取り組んできた経験からも、地道ではありますが若い時代から外国との交流、異文化の理解を深めていくことが重要であります。聞くところによりますと、府北部地域でも、舞鶴市や綾部市、さらにはNPO法人などでは独自に国際化の取り組みを進められており、例えば留学生をお客様的ツアー参加ではなく、地域住民の交流、企業訪問、文化体験などを通じて、まずは外国の方と接することになれていただき、さらに相互理解を深めていく、一方、留学生には京都のよさを知ってもらい長期
留学や京都への定着につなげていく、このような地道な活動の継続こそが国際化への近道であり、府域に広げていくべきではないでしょうか。
そこで、お伺いをいたします。
貴重な人財である留学生などを活用し、府内各地のNPO法人などとも連携し、外国人と触れ合う機会の少ない地域の小学生や中・高生等に、外国人との交流の機会を拡大し、若い時代から国際感覚や多文化共生につなげていく必要があると考えますが、今後の展望をお聞かせください。
次に、府南部地域の治水対策について質問をさせていただきます。
本年8月の台風10号による北海道、東北地方の大災害など、最近、全国各地で異常とも言える豪雨が発生し、大規模な浸水被害が発生しています。幸いなことに府域では、ことしは大きな浸水被害は発生しませんでしたが、平成24年、25年、26年と3年連続で大規模な浸水被害に見舞われており、府民の安心・安全を確保するためには治水対策は喫緊の課題であると考えます。
山田知事におかれましては、一たび災害が発生すれば、常に現場のことを最優先に率先垂範して対応され、また、去る8月4日に災害からの安全な京都づくり条例を施行されるなど、ソフトとハードの両面から府民の安心・安全確保のための施策を的確に進めていただいていることに敬意を表したいと思います。
さて、3年連続の大規模な浸水被害を受け、府においては、宇治市の弥陀次郎川で昨年6月に天井川の切り下げ工事が完了し、城陽市の古川、亀岡市の桂川及び南丹市の園部川並びに福知山市の弘法川、法川などで重点的に河川整備に取り組んでいただいているところでありますが、府域全体で見ればまだまだ改修途上や未改修の河川も多く、これまで以上に治水対策を積極的に進めていかなければならないと考えます。
また、私の地元の堂の川の木幡池についてでありますが、平成24年、25年と2年連続で浸水被害が発生し、その後、国、府、宇治市の三者で協議、検討を進めてこられました。このたび、国における大島排水樋門の増築と府による木幡池の掘削などを内容とする計画が取りまとめられ、この内容で、去る9月10日に地元説明会を開催したところ、地元はこれまでポンプを増強してほしいと要望していましたが、できることからやってもらうということで、この計画で進めることを受け入れたと伺っております。今後、宇治川圏域河川整備計画に木幡池を追加する計画変更の手続が行われると聞いており、これから抜本的な治水対策を進めていただけるものと大きな期待を寄せているところであります。
そこでお伺いをいたします。
府域の治水安全の向上を図るために必要な予算を確保し、より一層河川整備を進めるべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。
また、木幡池については、速やかに河川整備計画の変更を行った上で治水安全度の向上を図っていくべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。知事の御所見をお聞かせください。
次に、天ヶ瀬ダム再開発事業についてでありますが、現在、国土交通省において、ダムの洪水調節機能の強化や利水容量の効率的な活用を目的に、放流能力を増強する天ヶ瀬ダムの再開発事業に鋭意取り組んでいただいているところであります。天ヶ瀬ダムのすぐ下流に市街地がある宇治市にとってこの事業は大変重要であり、早期完成を待ち望んでいるところであります。特に3年前の平成25年9月に京都府に来襲した台風18号は、府内全域に大雨を降らせましたが、宇治市内でも時間雨量31ミリ、総雨量248ミリを記録する大雨となりました。このとき天ヶ瀬ダムは、ダム下流の宇治川の水位を確認しながらぎりぎりまで洪水調節を行いましたが、台風18号による雨は激しくダムヘの流入量が増加したため、昭和39年にこのダムが完成して以来、初めてダム上部にある非常用ゲートから放流する異常洪水時防災操作、いわゆる「ただし書き操作」を行いました。このため、宇治川の水位は、向島観測所で計画高水位4.11メートルを超え、最高で4.60メートルに達し、地元の皆様は大変不安な思いをしたところでありますが、洪水調節機能を強化する天ヶ瀬ダム再開発が完成すれば、宇治川のピーク水位を低減させることが可能となることから、より一層、天ヶ瀬ダム再開発の必要性、重要性を強く認識したところであります。
こういった中、天ヶ瀬ダム再開発については、国が9月に事業費の増額、工期の延期を発表し、この12月議会に基本計画変更に対する知事意見の回答案が提案されているところでありますが、天ヶ瀬ダム再開発については過去にも事業費の増額、工期の延期が行われており、早期完成を願っていた我々にとっては非常に残念な思いを抱いております。しかし、今回の計画変更の理由は、トンネル掘削に際し脆弱層が予想以上に広がっていたことや、掘削土からヒ素が検出されたことなど、安全・安心のためにはある程度やむを得ないものであることも事実で、今回の基本計画変更に当たり京都府が独自に行った検証でも、今回の変更はやむを得ないものと判断されるとの評価が行われたところでございます。
そこで、お伺いをいたします。天ヶ瀬ダム再開発について、今回の計画変更について、知事の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
時間がなくなりました。これ以上質問ができませんので、私はこれで質問を終了させていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
8: ◯議長(
植田喜裕君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
9: ◯知事(
山田啓二君) まず、「お茶の京都」についてでありますけれども、山城地域は長い歴史の中で、お茶の文化や産業をリードしてまいりましたが、現状を見ると、いい面としましては、世界的に抹茶スイーツの人気が高まっている。そして、和食が無形文化遺産登録によって、まさに日本茶が今、世界に飛躍するチャンスを迎えていると思っております。そして、こうした日本文化の魅力にひかれて、京都へも本当に多くの外国人の皆様が今来ていただいていると思っております。
ただ一方では、生活様式の変化によりまして急須のない家庭がふえるなど、消費の低迷や生産者の高齢化があります。そして、宇治茶ということでも、やはり知名度は世界的に決して高くはございません。さらに、この地域、宿泊施設が少なく、1人当たりの観光消費額も府内でも低いところでございますし、地域が非常に広いために二次交通の利便性が低く、京都市内に集中する観光客をなかなか山城地域全域に誘導できていないという現状がございます。
こうしたために、私どもといたしましては、宇治茶の価値を再確認して総合的なお茶の振興を図り、それを地域へと波及させていきたいという思いでおりまして、ちょうど追い風のように日本遺産の第一号認定ですとか、来年には新名神高速道路の城陽-八幡間の開通もありますので、来年をターゲットといたしまして「お茶の京都博」に取り組んでいこうとするものであります。
こうした「お茶の京都博」の趣旨を踏まえして、来年の「お茶の京都博」の概要でありますけれども、4月には桂川、宇治川、木津川の三川合流地点に新しい施設もできましたので、この地点のお披露目も兼ねて、さくら茶会(仮称)の開催を皮切りにしたいと思っておりまして、10月には宇治市でメーンイベントの文化プログラムを行いまして、さまざまなことをやっていきたいと思いますし、12月には木津川市で行います「ヘウケモノ(ひょうげもの)あーと茶宴」で、若者にも親しめるような茶器やしつらえ、飲み方の提案など、アートもやっていきたい。そして、さらに子どもたちを対象に、お茶をテーマにした作文絵画コンクールを行うほか、将来の宇治茶ファンを育てるためのキッズ茶ムリエの検定ですとかT-1グランプリも開催する。そして、お茶の魅力発信としましては、5月に京都と東京のフードイベントを行いましたし、今後さらに、産業の国際交流プログラムですとか日本遺産のサミットといったようなものも行って、海外への発信もしていきたいと思っております。
そして、地域交流の強化としましては、「お茶の京都」のゲートとなりますお茶の京都ハウスinステーションを基点として、各地のビューポイントに茶畑ハウスや茶畑アートを設置していく。そして、お茶所バスや茶いくるラインやモビリティトライアルといった、さまざまな地域をつなぐイベントを山城地域一円で開催していきたいと思っております。まさに、イベントが大切なのではなくて、イベントを通じて、今はやりの言葉でありますけれども、どういうレガシーを残していくのかが一番重要でありまして、その中では、宇治茶の価値を再認識していく催しによって宇治茶というものの大切さをもう一回しっかりと認識して、それを世界に発信し、さらに域内のさまざまな交流をこの際つくり上げていくことによって、将来にわたって、DMOの設置も含めて、お茶の振興になるようなイベントにしていきたいというふうに考えているところであります。
その中で、「お茶の京都」のDMOでありますけれども、先ほど申しましたように、山城地域に宿泊施設が少なく、1人当たりの観光消費額が低い、そして地域が広大で二次交通網の不便なため周遊性が弱い、そしてお茶以外の特産品を十分生かしていないという現状がありますので、こうした課題に対して、地域特産品のブランド化ですとか、さらに観光地域づくりのかじ取り役を担うという、いわば地域商社としての役割を与えていきたいと思っておりまして、市町村や観光協会、商工会、JA京都やましろなど関連団体との連携のもと、年明けに設立し、来年4月から本格稼働していきたいと思います。そして、稼働の後にはマーケティング調査をし、さまざまな戦略的商品を開発し、そして観光タクシーや電気自動車レンタカーなど二次交通網の整備から、京野菜などの地域特産品についての販売を含めて、まさにこの地域をしっかりと運営していくマネジメント会社になるようにしていきたいと考えているところであります。
次に、スポーツ施設の整備でありますけれども、スケートリンクのお話、まさにそのとおりでありまして、京都は特にスケート界で実績があったのですけれども、そうした選手が今、流出をしてしまって非常に厳しい状況が続いている。そして、府民の皆様が一年を通してアイススケートを楽しむ機会が失われているという現状があります。こうした現状を踏まえて、何とか打ち破りたいと思っていたところ、ことし9月に京都府スケート連盟が主体となって、民間事業者と連携して通年型アイスアリーナの整備について山城総合運動公園内の土地を貸していただけないかというお話がありました。こうした要望を受けまして、私どもは今、財政的にはかなり予定が詰まっている現状がありますので、そうした中でこの申し出というのは非常に効果的なアイススケート整備につながるのではないかということで、現在、京都府スポーツ施設のあり方懇話会において議論いただいているところであります。
懇話会の議論の中では、通年型アイススケート場の整備はやっぱり必要ではないか。しかしながら、府民に大きな負担をかけないでいける方法という点では、民間の活用という点では非常にいいのではないか、府は用地の提供や造成で済むのではないかということ。そして、山城総合運動公園であれば、府内だけではなくて大阪や奈良といったような近隣府県の利用者も見込まれるのではないか、また冬季スポーツの振興につながる施設ができれば、山城総合運動公園全体の振興にもつながるのではないかという意見が出される一方で、民間連携スキームのあり方については、やはり、かなりしっかりと検討すべきではないかという意見も出されているところであります。全体としては賛成意見が多いようでございますけれども、今後、懇話会からの意見をもとに、このスキームについて、私どもといたしましても府のスケート連盟と協議いたしまして、議会の御意見も伺いながら、できればそれにこしたことはないというふうに考えておりますので、そうした方向で取り組みを進めていけたらというふうに考えているところであります。
次に、国際化のさらなる推進についてでありますけれども、まさに大きな国際交流が各分野で行われてきている。特に京都府は、世界都市としての位置づけが観光面でも産業面でも、また学術面でも今、進んできているという現状を踏まえますと、次の世代に向けて、私たちは国際社会で活躍できる人づくりを行っていくということは、大きな責務であると思っております。そして、その中で国際社会を形成していく上で、まさに京都における国際化を進めていく上で留学生施策というのは大変重要な意味を持っていると思っておりまして、この留学生の皆様が京都において快適に学生生活を送れるように、私どもは平成24年にきょうと留学生ハウスを、そして平成26年に、きょうと留学生オリエンテーションセンターを開設いたしまして、こうした環境を整えてまいりました。また、各大学や行政等が個別に行っている留学生の推進施策を京都ブランドで統一して京都の魅力を高めるために、昨年5月にオール京都体制で留学生スタディ京都ネットワークを設立いたしまして、ワンストップでの対応体制を整えたところであります。昨年度はこのネットワークで、海外9都市で留学生フェアを開催し、約1万7,000人の来場者に京都の魅力を紹介いたしますとともに、総合相談窓口の設置ですとか京都
留学総合ポータルサイトの開設などを行ってまいりまして、今年度からは、京都の中堅・中小企業のインターンシップを実施するほか、来年1月には、来日前から住まい探しができる多言語の京都住宅情報サイトを創設する予定になっておりまして、今、京都の留学生数は順調に伸びてきておりますし、また京都企業への就職の留学生も385人に上るなど、成果が出てきているところであります。その中で、若い世代の国際感覚や多文化共生の醸成のためにも、まさにこうした留学生の活用を進めておりまして、京都府名誉友好大使が小・中学校や高校の144事業に延べ1万3,136名を派遣いたして、子どもたちとの異文化交流を支援しているところでありますし、また懇話会からも、もっと機会をふやすべきだとの報告をいただいておりまして、京都大学などと連携した留学生短期プログラムに府域へのフィールドトリップを組み込みまして、農業体験や京都府の文化・歴史に触れるだけではなく、府域の方々との交流機会を設けているところであります。また、NPO法人北近畿みらいでもこうした取り組みを行っていただいているところでありまして、非常に地域の子どもたちからも好評であります。
さらに、ことし30周年を迎えたJETプログラム事業では、これまで、京都府内においても累計2,152名、現在も95名の外国青年を招致いたしておりまして、うち85名は外国語指導助手として京都府下で頑張っていただいているところであります。また、国際交流員も10名、京都府や府内市町村で地域の国際活動に従事していただいておりまして、先ほどのオクシタニ州とのときにここで司会をしていた青年もその京都府の国際交流の指導員でございます。そうした中で、若い人たちが外国人に接する機会は本当に着実にふえてきていると思っておりまして、今後ともこうした取り組みを通じて、次の世代の地域の国際化を進めてまいりたいと考えております。
次に、府南部地域の治水対策でありますけれども、河川整備の予算につきましては、頻発する水害を受け、5年間で国の公共事業予算の伸び率は7%にとどまっている中、京都府の河川改修予算は25%増になるなど、必死の努力を続けてきているところでありまして、今回の補正予算でも、当初予算の3割に相当する約16億円を、国の経済対策を活用して確保したところであります。さらに城陽市の古川などでは、床上浸水対策特別緊急事業による別枠予算を確保して事業の進捗に努めてきたところでありますし、先日は予算要望の重点要望におきましても、私自身が直接、石井国土交通大臣に確保のお願いをしたところでありますし、地元の議員団の皆様にも予算要望をしていただいたところでありまして、お礼を申し上げたいと思っております。
今後とも必要な予算を確保しながら、災害からの安全な京都づくり条例に基づき、総合的な治水対策を積極的に進めてまいりたいと考えております。
また、木幡池についてでありますけれども、これまでから30年に1回程度の降雨により予想される浸水被害の解消を目標として、大島排水樋門の排水能力の増強を国が行っていく、そして木幡池の治水容量を増加させるための木幡池の掘削や堤防のかさ上げを京都府が行っていくなど、国、府、宇治市の3者による協議会で取りまとめて、去る11月17日に河川整備計画検討委員会を開催し、有識者の意見を聴取したところであります。引き続き、今議会で御報告を申し上げ、御意見を伺った上でパブリックコメントや関係機関との協議を進め、来年度早期に宇治川圏域河川整備計画に木幡池の改修を追加する変更計画を策定いたしまして整備を進めてまいりたいと考えているところであります。
次に、天ヶ瀬ダム再開発の基本計画の変更についてでありますけれども、この再開発は治水に、洪水対策に大きな可能性を持っているということで国に対して早期完成を求めてきたところでありますけれども、国から3回目の計画変更が示されたところであります。このため、京都府の学識者による委員会にその検証をいただいたところでありますけれども、変更内容につきましては、破砕帯対策工の追加等の変更要因は、計画当初には想定できなかったことであり、総合的に今回の変更はやむを得ないものと判断されるとの御意見をいただいたところであります。京都府といたしましては、当初の見込みを上回る府民負担についてはまことに遺憾であるという旨を国に伝えましたけれども、検証結果を踏まえまして、やむを得ないものとして今議会に意見についての議案を提出して、御審議をお願いしているところであります。国に対しましては、今後さらなる事業費や工期の変更がないよう、徹底したコスト縮減と工期の厳守を強く求めてまいりたいと考えているところであります。
10: ◯議長(
植田喜裕君) 次に、平井斉己君に発言を許します。平井斉己君。
〔平井斉己君登壇〕(拍手)
11:
◯平井斉己君 民進党・府民クラブの平井斉己でございます。私は会派を代表し、さきに通告しました諸点について、知事並びに関係理事者に質問をさせていただきます。
最初に、質問に先立ち、今定例会に提案されている、第3次緊急経済対策と福祉共生対策の2本柱を内容とする補正予算案について申し上げます。
まず、緊急経済対策については、北部と南部それぞれに、企業の研究開発を促進する機能を備えた中核施設を整備しようとするものであり、企業の新たなビジネス展開を支援することにより地元経済の活性化に大いに期待できるものであり、会派を代表して高く評価いたします。企業が必要とする支援にしっかりと応えられるよう、さまざまな意見も聞きながら整備を進めていただきますようお願い申し上げます。また、今回、福祉共生対策として、高齢者共生型まちづくりやファミリーホーム開設支援の予算が計上されていますが、介護や子育てをめぐるさまざまな課題が浮かび上がっている中、誰もが生きがいと安心を持って暮らせる共生社会の実現に向けた対策として、今まさに求められているものであります。このほか、府民公募型整備事業の債務負担行為の設定や観光の予算も含めて、いずれも府民からの切実なニーズに応えるものであり、会派を代表して高く評価いたします。
それでは質問に入ります。
初めに、2017年度当初予算編成についての基本理念についてお伺いいたします。
私たち民進党・府民クラブ京都府議会議員団は、来年度の予算に関する要望・提言を取りまとめ、少子高齢化のさらなる進展に加え厳しい行財政環境が続く中、多様化する諸課題に合わせた中長期的な展望を求めるなど、234から成る要望項目を去る12月1日、山田知事に提出をいたしました。今年度、本府では、人づくり、働きづくり、地域・文化づくり、安心づくりの4つの京都づくりを掲げ、京都創生予算をスタートさせました。今の日本はさまざまな格差にあふれております。人口の格差、地域経済力の格差、所得の格差、道路や鉄道など交通網の格差などが顕在化し、加速化しております。このような中、本府では、「もうひとつの京都」づくりに象徴されるあらゆる地域の個性を生かした取り組み、さらには女性・若者・高齢者・障害者、全ての府民が輝く取り組みなどは地域が持つ潜在的な能力を最大限発揮するものであり、大いに期待を寄せているところであります。
このような中、昨年7月には京都縦貫自動車道が全線開通したほか、ことしの10月には野田川大宮道路が開通いたしました。長年の悲願であった府域の南北格差を解消する大きな切り札になるものです。加えて、本年3月には文化庁の京都移転が決定するなど、これまでの取り組みが着実に実を結んでおり、今後のさらなる交流と文化の力による元気な京都づくりの進展に期待しているところであります。
一方、府内の地域によって人口の増減に偏りがあり、また子どもの貧困率の上昇や非正規雇用の増大などの格差問題が全国的にも深刻化していることも事実であります。こうした社会問題への対応は、本府としても重点的に取り組むことが求められます。いよいよ来年度の予算編成がスタートいたします。先ごろ、来年度予算及び組織の編成方針が示されました。今回の編成方針では、軌道に乗りつつある地域創生の取り組みをさらに積極的に進めていくことに加え、新たに共生社会の実現が打ち出されています。府民一人一人が自分の可能性を実現できる、お互いに支え合う共生社会を実現していくための施策に重点的に取り組むことは大変重要な視点であり、その実現のために、中でも次代を担う子どもたちや若者の就労に関する施策について、とりわけ全国的にも社会問題となっている子どもの貧困対策や若者の正規就労支援などについて積極的に取り組むことが必要であると私も考えているところであります。
そこで知事にお伺いいたします。
今回の編成方針の中で、知事は「地域創生の向こうに共生社会の実現を」という言い方で、共生社会の実現という大きな方向性を打ち出されました。その考え方について、知事の御所見をお伺いいたします。
12: ◯議長(
植田喜裕君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
13: ◯知事(
山田啓二君) 平井議員の御質問にお答えいたします。
平井議員におかれましては、ただいまは会派を代表されまして、今回の補正予算案に対しまして高い評価をいただき、厚くお礼を申し上げたいと思います。
共生社会実現への思いについてでありますけれども、京都府政は府議会で御議決いただきました基本理念、原則となる条例、そして「明日の京都」といったものに沿って、今、運営をしているわけでありますけれども、この「京都府行政運営の基本理念・原則となる条例」の第1条第1項の基本理念では、「府民が人間として大切にされるために、だれもが社会の一員として参画することができ、府民同士が尊重し合い、つながり、支え合う、人にやさしい社会を実現すること」としておりまして、まさに共生社会の理念をうたっているところであります。
こうした背景には、私どもの京都府自身が、もちろん地域創生を初め、今、大きな飛躍の時を迎えておりますけれども、一方では、多くの限界集落を抱え、また高齢化比率が30%を超える府内市町村も13に上るなど、大変厳しい状況があります。こうした中で、地域コミュニティが衰退したり、地域間格差が拡大をしている。また、非正規職員の増や子どもの貧困問題を初めとした社会全体のゆがみに伴うさまざまな課題が、これは日本中で今、深刻化をしているところであります。私たちは地域創生という地域の資産、資源というものを生かして発展の道を探っておりますけれども、その向こうにあるものというのは、決して人々が互いに孤立し合う、そうした社会ではなくて、まさに地域のよさというのは、支え合い、つながり合っていく中で本当に発揮できるんだという社会を目指していきたいということで、私たちは今、取り組みを進めていきたいと思います。特に最近、ヘイトスピーチですとか相模原の障害者施設殺傷事件、また世界に目を向けましても排斥型の主張が非常に強さを増してきている時代であります。こうした時代だからこそ、私ども京都としては、より共生型というものをしっかりと発信できる体制をつくっていきたいというふうに考えているところであります。こうした思いで来年度の編成方針に「地域創生の向こうに共生社会の実現を」と示させていただいたところであります。
これから予算査定に当たっていくわけでありますけれども、京都府の施策を先ほど御指摘がありましたように、次の世代にしっかりとつなげていくための子どもの貧困問題ですとか、さらには若者の就労支援、また障害者や高齢者や女性など、弱い立場の方々の視点をできる限り踏まえて見直していかなければならない。また、産業政策におきましても、中小企業や非常に厳しい現状にある伝統産業といったような視点を踏まえた形で見直しをしていく。こうしたものを通じて、私たちは、府民の皆さん一人一人が自分の可能性を発揮できるようなサポート体制の充実と寄り添った切れ目のない包括的な支援ができるサポート体制を構築していきたいと思っておりますし、その上に地域が連携し、協働し、支え合う、まさに地域力を高めていく、そういう社会の実現を目指していきたいというふうに考えているところであります。
14: ◯議長(
植田喜裕君) 平井斉己君。
〔平井斉己君登壇〕
15:
◯平井斉己君 御答弁をいただきました。京都府は、地域的にはもちろん南北の格差、あるいは各地域に限らず経済の格差、さまざまな格差がある中で、特に今の日本の状況も踏まえまして、ややもすれば知事もおっしゃられたように、排斥型の考え、あるいはそういう流れが起こっている現状もあると思います。それに歯どめをつける意味では、共生型の社会という知事の一つの方針というのは我々も非常に評価させていただきたいと思いますし、しっかりと一人一人の府民の気持ちを大切にしながら府政を推進されることをさらに要望させていただきたいと思いますので、お願いしたいと思います。
それでは、質問を続けさせていただきたいと思います。
次に、歯と口の健康づくり、とりわけ後期高齢者健診事業について質問をいたします。
歯と口の健康を保つには、健康で豊かな生活を送る上で必要なことであり、近年では、心疾患や糖尿病を初めとする生活習慣病の改善、誤嚥性肺炎などの高齢期に起こりやすい病気の防止など全身の健康につながるものであり、全ての府民にとって大切なことであります。本府では、これまで8020運動やフッ素塗布・洗口など、以前から取り組まれてきましたが、国において2011年8月に歯科口腔保健の推進に関する法律が施行され、2012年7月には歯科口腔保健の推進に関する基本的事項が厚生労働大臣から告示され、施策の総合的な実施のための方針、目標、計画などが制定されました。こうした中、本府においても2012年12月に議員提案により京都府歯と口の健康づくり推進条例が制定され、この条例に基づき2014年3月には京都府歯と口の健康づくり基本計画が策定されました。
その要旨は、1、歯と口の健康づくりを通じ、府民の健康の保持・増進を図る。2、乳幼児期から高齢期までの特性に応じた歯と口の健康づくり。3、全ての府民が歯科保健医療サービスを受けることができるよう、従事者の人材育成、環境整備などの取り組みを推進するとされています。歯と口の健康づくりを推進するには、まずは府民が歯と口の健康づくりの重要性を理解し、定期的な歯科健診を受ける必要があります。2011年度の京都府民歯科保健実態調査の結果では、20歳以上で定期的に歯科健診を受けている者の割合が44.3%であり、2016年度の歯科健診受診率については調査中と伺っておりますが、基本計画における来年の2017年度の目標は55%と設定されており、自主的に受診をされない方への働きかけが重要であります。そのためには、住民の身近な市町村における取り組みが必要でありますが、歯科健診の実施状況には市町村格差があるのが現状であります。とりわけ高齢者においては、歯の喪失による低栄養や飲み込み機能の低下による誤嚥性肺炎の発症などがふえてきます。超高齢社会を迎え、健康で質の高い生活を送るためにも、今後さらに歯科健診の受診率向上の取り組みが必要と考えます。
それらの取り組みの基礎となる歯周疾患検診、さらに後期高齢者歯科健診事業を例に挙げてみたいと思います。高齢者の健康寿命の延伸のためには、要介護状態になることをできる限り防ぐことが重要です。近年、フレイル、つまり虚弱、またサルコペニア、つまり筋肉減少が要介護状態の入り口であるとも言われています。このフレイルやサルコペニアの予防は運動・栄養・口腔ケア、または社会参画が大きな柱との学術的な見地から報告されています。その対策として、在宅や施設における要介護高齢者に対して、本府においては歯科医療従事者の人材育成や検診事業が行われていますが、要介護状態になるのを防ぐための施策は不十分ではないかと考えます。
国においては、2014年度から後期高齢者医療制度事業費補助金の新たな補助対象に歯科健康診査が追加されました。まさにフレイル予防の第一歩を踏み出したところです。これらの要介護となることを予防する事業は市町村の事業ではありますが、本府としても予防のための健診を推進する立場から市町村への働きかけを進めるべきだと考えます。
そこで、知事にお伺いいたします。
2017度には、京都府歯と口の健康づくり基本計画の最終年度を迎えることから、計画策定後、これまでの取り組みや課題、今後の後期高齢者歯科健診促進の考え方についての御所見をお伺いいたします。
最後に、障害者企業就労支援の強化についてお伺いいたします。
本府教育委員会の特別支援学校での取り組みについてです。特別支援学校に在学する生徒やその保護者にとりましては、高等部までは整った教育環境のもとでしっかりとしたサポートを受けながら日々の生活を過ごすことができることとなると考えています。しかし、卒業後は学校外の世界に飛び出し、学校生活よりもはるかに長い年月を一社会人として歩んでいかなければなりません。ここで就職・就労という高い壁にぶつかるわけでありますが、これを乗り越え働くことを通してさまざまな人と出会い、かかわり合いながら職業的に自立し、生きがいを持ちながら社会生活を送れることが、生徒のみならず、御家族にとっての悲願とも言うべき最大の願いであります。
現在、府立特別支援学校における就職希望実現率を見てみますと、これは卒業時に企業就労を希望する生徒が民間企業への就職を実現した割合を示すものでありますが、その実現率は、近年、着実に改善し、2015年度は81.8%まで上昇してきており、この間の学校関係者や関係機関の御努力に敬意を表するところであります。
一方で、生徒全体の卒業後の進路をみますと、約7割の生徒が就労継続支援事業所といった施設での福祉的就労に従事しており、民間企業に就労する生徒は3割程度にとどまっている現状があります。一旦、福祉的就労についた場合、その後、民間企業就労に切りかえることは相当難しく、今後は、就職希望実現率100%に向けた施策とともに、就職希望者数の増加を図る施策の両面を充実させることが、一層重要になると考えます。
このような中、昨年12月定例会で質問させていただいたときに、教育長から「城陽支援学校通学高等部において、卒業後の職業的自立に向け、職業学科設置の取り組みを充実させていきたい」との御答弁をいただきました。そして、本年度当初予算に職業学科設置準備経費として500万円が計上され、城陽支援学校に、京都府内初となる職業学科が来年の2017年度に開設されることが決まりました。この職業学科では、ビルメンテナンスや流通・サービス業といった障害者を雇用する割合の高い企業が求める人材にマッチした専門的な教育課程が整備されると伺っており、障害のある子どもを持つ保護者から大きな期待の声が私のところにも寄せられているところであります。
そこで、教育長にお伺いいたします。
まず、城陽支援学校の職業学科開設に向けた現在の進捗状況をお聞かせください。また、今回の職業学科の設置は就職希望実現率や就職希望者数の向上に対して、どのような効果があるとお考えでしょうか、お聞かせください。
私は、職業学科の設置学校をさらにふやし、企業就労支援をさらに強化すべきと考えますが、職業学科の増設に向けた次なる展開と、企業就労が弱いとされる府内中北部への設置に向けた今後の展望をお聞かせください。また、この職業学科の設置を初め、企業就労支援の取り組みが有効的に機能し十分な効果を発揮させるためには、雇用する企業側のニーズをしっかりと捉えた職業教育の構築が不可欠であります。企業が求める能力は、時代の瞬間で絶えず変化していきます。ともすれば、企業連携が不十分な場合、学校現場における職業教育の内容と企業側が現場で求めている能力との間にミスマッチが生じてしまい、職業教育を経て学校側が自信を持って送り出した生徒であるにもかかわらず、実は、現場で求めている能力と本人の能力が違うものであったといったケースが発生しないか、危惧するところであります。企業側がどういった能力、技量を有する人材を求めているかといった点については常に情報交換し、十分かつ的確に把握することが就労を確かなものにする上で極めて重要な観点であると考えます。
例えば、広島県では、知的障害のある生徒の企業就労を支援するため、ビルメンテナンス協会やホテル・レストラン技能協会、スーパーマーケット協会などの関係団体と共同開発した県独自の技能資格制度を「清掃」「接客」「ワープロ」「流通・物流」「食品加工」の5分野に導入されるなど、斬新で先進的な取り組みが行われています。この資格検定にチャレンジした生徒の8割以上に技能向上の効果があり、受検者数も右肩上がりに増加しており、知識や技能の習得だけではなく、主体的に学ぶ意欲など相乗効果も生まれていると伺っております。
また、企業側の評価もよく、ビルメンテナンス関係団体では「一つの雇用市場として期待が大きい。即戦力になる生徒もいる」との高い評価を受けていると聞き及ぶところであります。さらに、民間企業への就職率を示す広島県の一般就労率は、2015年度は42.4%と、全国平均の28.8%を13.6ポイントも上回る高い数値が示されていることからも、技能資格制度は特別支援学校生徒の就職支援に非常に有効な施策であると考えます。本府においても企業のニーズに即した技能資格制度を導入するなど、企業連携をさらに強固なものとする新たな制度を導入されてはいかがでしょうか。とりわけ、技能資格制度を導入することで、現在、府内南北の学校間によって差がある企業との協力体制を多くの学校で充実させることができると考えます。また、最近の就職企業先は、清掃・運搬のほかに、小売業、福祉系サービス業など多様化しており、職種にとらわれず、できる限り多くの企業団体と協力体制を整備する必要があり、多様な職種・分野において技能資格を設けることでこの課題もクリアできるのではないかと考えます。企業連携による就労支援の強化は、人材育成における企業現場と学校現場のミスマッチを解消し、特別支援学校卒業生の一般就労率の改善につながるものと考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
そして、教育現場で取り組みをさらに進めるための障害者雇用を積極的に進める企業への支援策も重要であります。現在、京都の民間企業での障害者雇用状況を見ますと、2006年調査では、対象企業数は1,351企業で実雇用率は1.64%であり、法定雇用率達成企業の割合は44.5%でした。昨年の2015年調査では、対象企業数は1,680社で実雇用率は1.97%と0.3ポイント改善、法定雇用率達成企業の割合も49.7%で5.2ポイント改善されました。しかし、法定雇用率達成企業の割合は依然として50%を割っている現状も注視しなければなりません。
一方、ハローワークを通じた障害者の就職件数は全国で2011年度5万9,367件から昨年度は9万191件と増加しており、本府でも1,408件から2,041件となり、民間企業側も障害者雇用を積極的に進めようとされているとも読み取れます。また、本府ではジョブパークにおいて京都障害者雇用企業サポートセンターを設置し、民間企業への働きかけを行い、企業側の実態に即した職務内容や職場環境などの相談事業に取り組まれており、時勢を捉えた動きであると考えます。
そこで、知事にお伺いをいたします。
民間企業に就職する障害者がふえる一方で、せっかく民間企業に就労をしても長く続かないという課題もあると伺っています。定着率向上に向けた本府の取り組みについてお聞かせください。また、本府教育委員会における特別支援学校での障害者就労支援の取り組みと知事部局が所管する障害者就労支援の取り組みの連携がどのようにされているのか、知事の御所見をお伺いいたします。
16: ◯議長(
植田喜裕君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
17: ◯知事(
山田啓二君) 歯と口の健康づくりについてでありますが、口腔の健康が保たれることは、高齢期における生活習慣病の予防と改善につながって、認知症から肺炎予防、健康寿命の延伸等、非常に大きな効果をもたらすと思っております。このために京都府では、平成24年12月に議会の提案によります京都府歯と口の健康づくり推進条例が制定されたのを機に、条例に基づき策定した基本計画に即し、乳幼児期から高齢期まで、各ライフステージに応じた歯科保健事業を展開しているところであります。とりわけ成人対策といたしましては、節目健診ですとか妊産婦健診など、成人期の歯科健診の実施や職域における歯周病の予防啓発の実施、高齢期においては、老人クラブなどにおいて口内の口腔の機能訓練による介護予防、さらには8020運動を推進するための啓発動画の作成や歯科健診の受診啓発、知識の普及などにも取り組んできているところであります。
こうした取り組みの結果、成人の歯科健診を実施する市町村は平成28年度で17市町村に増加をいたしましたし、京都式介護予防総合プログラム、これは口腔ケアを盛り込んでおりますけれども、この市町村も平成28年度で10市町村に拡大はしてまいりました。しかしながら、成人歯科健診にこうして取り組む数はふえているんですけれども、受診者はまだわずか4,000人と少なく、とりわけ後期高齢者の健診というのは、昨年度実績でも2市町村で82名にとどまっているという現状がございます。このために、市町村への助成事業の実施により、まずは40歳からの節目健診である歯周病検診を実施する市町村を拡大いたしますとともに、対象者への個別案内、セット検診などにより受診率の向上を図っていく。その上で、唾液の飲み込みテストなど、そしゃくや嚥下機能も評価する後期高齢者歯科健診の実施拡大を図る取り組みなど、成人期から高齢期にわたります保健指導について目標を置いて取り組んでいきたいと思っているところであります。こうした取り組みを通じまして、府民の生涯にわたる歯と口の健康の保持増進を図って、健康寿命の延伸につなげてまいりたいと考えているところであります。
次に、障害者雇用についてでありますけれども、御紹介のとおり障害者雇用率は全国平均を上回る率で推移しておりますけれども、一般労働者の平均勤続年数が大体12年なのに対しまして身体障害者は10年、知的障害者は7年9カ月、精神障害者は4年3カ月と大変短くなっておりまして、いかに定着していくかが、京都府のみならず全国的な課題になっているところであります。ただ、障害のある人といっても、これは一人一人違う障害特性でありますので、そうした障害特性を理解して、例えば企業側も一緒に働く従業員の意識啓発や障害に対応した職場環境の整備など、また、本人も障害特性を十分理解するなど、双方の取り組みが不可欠になってまいります。このため、京都ジョブパークはあとふるコーナーにおいては今年度から、本人が自分自身の特性や作業能力を客観的に把握できる職業評価ツールを導入して、これまでに107人が実践をしてまいりました。そして、企業実習から定着まで障害者に寄り添い支援するジョブサポーターが就職後に職場を訪れ、悩みなどの相談に対応する形をとりまして、昨年度は、延べ1,257名を支援してきたところであります。
一方、企業に対しましては、京都障害者雇用企業サポートセンターにおいて、企業の人事担当者が障害のある従業員へのサポート方法について相談できる個別相談会を毎月開催するとともに、障害者雇用事例勉強会等を開催して、ことしは既に162社、延べ227名の方が参加をしております。このほか、実践アドバイザーの任命とか啓発冊子の発行、こうしたものを通じて企業の理解を深めているところでありますし、こうした取り組みによりまして、ジョブパークを利用した障害のある方の就業6カ月時点の定着状況は、確実にふえてきている状況がございます。
また、特別支援学校の生徒への就職支援につきましては、これまで各支援学校の教員が行っていた企業開拓を強化するために、平成26年度から京都ジョブパークに就労支援コーディネーターを設置しておりますけれども、これを支援学校の就職支援も行う形で、今、運用しております。支援学校とコーディネーターが連携すること、ジョブパークの企業情報やネットワークを活用することで、学校単位だった開拓先が大幅に拡大できるとか、支援学校はより生徒指導に専念できるという体制が確立できる。また、ふだん接することのないコーディネーターからの指導による生徒の対人能力の向上ですとか、生徒の希望や特性を共有して企業開拓することで実習受入企業も増加するといったような効果が出てきているところであります。さらに、教員や保護者を対象にした就労の心得などのセミナーによりまして、就職希望実現率も向上してきているところでありますので、今後とも知事部局と教育委員会の連携を強めて、一人一人の状況に応じた支援をオール京都で行っていくことによりまして、障害者雇用の促進に努めてまいりたいと考えているところであります。
18: ◯議長(
植田喜裕君) 小田垣教育長。
〔教育長小田垣勉君登壇〕
19: ◯教育長(小田垣勉君) 平井議員の御質問にお答えをいたします。
府立城陽支援学校の職業学科についてでございますが、同校に新たにビジネス総合科を設置し、より就労に結びつきやすい専門的な知識や技能を身につけさせることにより、生徒全員の企業就労を目指すものでございます。6月には山城地域の中学校、特別支援学校中学部の生徒や保護者を対象に、職業学科の教育内容を説明するための体験学習会を開催いたしましたところ約60名の参加がございましたことから、職業学科への関心は高いものと考えております。現在、製品管理や販売、ビルクリーニングといった新たな作業学習の導入、社会人としてのマナーや情報処理を学ぶ教科の新設に向けまして、機器の整備や社会人講師による作業学習の試行などを進めているところでございます。
今回の学科設置によりまして、障害のある生徒の進路選択の幅を広げ、また同校の職業学科の取り組みを他校が取り入れていくことにより、就職希望者数の増加や就職希望実現率の向上につながるものと考えております。今後、府南部地域におきましては、福祉分野での職業学科の設置を視野に検討を進めますとともに、府中北部地域におきましては、立地する企業などの条件が府南部地域と異なりますことから、就労を目指すコースの設置も含めまして企業就労の充実策を検討してまいりたいと考えております。
また、就職を希望する生徒の増加につながりますように、近隣の府立高校との交流や共同学習に積極的に取り組み、障害の有無にかかわらず、地域社会でともに暮らすことへの意識を高めてまいりたいと考えております。
次に、企業連携の新たな仕組みの導入についてでございますが、11月下旬に業界団体の協力を得まして、府立特別支援学校の高等部生徒を対象にいたしまして、机や床の清掃を行います清掃検定を実施いたしましたところ、検定を受検いたしました生徒からは、企業就労に向けた積極的な姿勢が見られるようになったところでございます。さらにこのような検定を多くの企業に直接見ていただくことによりまして、企業の障害理解が促進され、障害のある生徒の雇用拡大につながるものと考えております。
今後は、企業や業界団体とのネットワークづくりを進め、障害者雇用についての社会的ニーズなどをお伺いするとともに、そうした声を踏まえまして、接客やパソコン実務といった幅広い分野での検定制度を構築し、さらに企業向け検定発表会の充実やインターンシップの実施検討など、就労支援の強化に努めてまいります。
20: ◯議長(
植田喜裕君) 平井斉己君。
〔平井斉己君登壇〕
21:
◯平井斉己君 御答弁をいただきました。まず、後期高齢者の歯科健診事業についてであります。基本的に、質問の中にも入れさせていただきましたけれども、市町村事業であるというのは前提であります。しかしながら、例えば近畿の近隣の三重県では、健診の登録をする事業者もふえていることから、健診を受ける方が非常にふえている。例えば、パーセンテージでいけば20%から、少ない市町村でも9%という数字が出ているとも伺っております。これをお聞きさせていただくと、市町村事業でありながら、県がしっかりこの問題に取り組んで音頭をとられているとも伺っております。もちろん健診を受けることだけが全てではないんですけれども、条例をつくり、高齢者の方の健康増進を図る、あるいは進めるということでも、県がされてきた事業を京都府でも一定の評価をいただきながら、よいところはまねて、さらに伸ばしていくことが重要だと思いますので、市町村の事業なんだということで終わるのではなく、京都府もしっかりその視点をお持ちいただきたいと思いますので、要望させていただきたいと思います。
あと、障害を持たれた方の就職と雇用のあり方についての質問をさせていただきました。昨年も職業学科の質問をさせていただく中で、今回の事業にもつながっている、あるいはそれをさらに進めるということは評価させていただきたいと思います。
一方で、広島県の事例も出させていただきましたけれども、知事の答弁にもあったように、障害をお持ちの方の性質、あるいは、ランクと言うと失礼なんですけれども、課題がすごく多様化していると思います。そういう意味でいきますと、それをしっかり評価するという意味では、資格制度を少し細やかな分野にわたってつくることで、もちろん生徒や障害をお持ちの方も自分の自信もつけていく、当然、雇われようとされている企業も、こういう資格があって、これにつながるんだという目安にはなると思います。これも同じようにせっかく先進事例がありますから、知事部局と連携をして、その制度を教育委員会が発案するのか、知事部局の就労のところでするのかは別としても、どちらかというと生徒を抱えている学校の設置者としては、もっと進めるという立場から一歩踏み出していただきたいと思います。
さまざまな形で取り組んでいただいておりますけれども、共生型の社会を進めるという視点をさらに進めていくということと、子どもたちに未来ある明るい京都府づくりにさらに邁進していただきたいと思います。
以上をもちまして私の質問とさせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
22: ◯議長(
植田喜裕君) 次に、堤淳太君に発言を許します。堤淳太君。
〔堤淳太君登壇〕(拍手)
23: ◯堤淳太君 民進党・府民クラブ府議会議員団の堤淳太です。引き続き、会派を代表し、通告に従いまして質問をいたします。私の質問は、ひきこもりからの脱出支援の充実についてと熊本地震を教訓とした災害への備えについて、一括にてお伺いをしたいと思います。理事者の皆様におかれましては、簡潔かつ明瞭な答弁をよろしくお願いいたします。
まずは、ひきこもりからの脱出支援の充実について、お伺いをしたいと思います。
ひきこもりが社会問題として大きく取り上げられるようになってから10年ほどの時間が経過いたしました。これまでの間、国や京都府でもさまざまな施策を講じながら、ひきこもりからの脱出支援を行ってまいりましたけれども、ひきこもりの問題は極度にプライベートな問題であり、その性質上、表面にあらわれにくく、また問題を抱える家族もそのことを隠したがる傾向にあるため実態の把握も容易に進まず、進捗は芳しくないと言えるのではないでしょうか。
ことし9月に内閣府は、2010年に続き2回目のひきこもりの実態調査の結果を発表いたしました。この調査は若者の生活に関する調査報告書として、15歳以上39歳以下の若年層を対象として5,000人をサンプル調査して推計する手法で行われました。この調査によると、今現在、日本では54万1,000人の方がひきこもりの状態にあると推計されています。この数字は2010年の調査で、全国では69万6,000人いると推計されていましたので、現在はそのときよりも15万5,000人ほど減少していることになりますけれども、しかし、人口に対する出現率の1.57%を本府の15歳以上39歳以下の人口に当てはめてみますと、実に1万1,000人もの方がひきこもり状態にあるという結果となり、大変に頭の痛い問題であると言えます。また、今回の調査で特筆すべき点として、現在はひきこもりではないけれども、ひきこもりの経験があるという調査を行ったところ、この出現率は8.4%という結果になりました。現在ひきこもりの状態にある割合も含めると、実に10人に1人の若者が、過去あるいは現在にひきこもりを経験していることになり、ひきこもりは非常に身近な問題であるということが言えます。
一方で、内閣府の調査は若者の生活に関する調査とされているため、15歳から39歳までの年齢で区切られており、最近問題として提起されている中高年のひきこもりに対応できていないという別の課題があります。40歳以上のひきこもりに関しては、国の所管は厚生労働省の管轄となり、厚生労働省の調査では内閣府におけるひきこもりの定義や調査手法が異なるため、推計値は日本全体で25万5,000世帯においてひきこもりの方を抱えていると発表されています。このように、内閣府と厚生労働省の推計値が大きく異なることからも実態把握の困難さが浮き彫りとなるとともに、控え目に見積もった調査でも、決して少なくない方がひきこもりの状態にあり、また40歳以上のひきこもりは、ひきこもりの状態が長期化しているケースが多くて、より深刻な事態であることが指摘されています。このように、ひきこもりは大きな社会問題となっております。将来的な社会福祉の負担増大などを考えれば、ひきこもりの方が社会の一員として復帰するための支援の充実・強化が求められるのではないでしょうか。
まず、本府の日常生活等自立支援事業についてお伺いをしたいと思います。ひきこもりの方の中には、経済的な理由で生活に困難を抱えている方も多いと思われます。このような中で、本府は、平成23年度からひきこもりの方も含め生活困窮者に対する支援策として、日常生活等自立支援事業を展開してまいりました。しかし昨年、国で生活困窮者自立支援法が施行されたことによって、昨年度からは法律に基づく事業へと移行することとなりました。積極的にひきこもりからの脱出支援に関心が寄せられるようになったことは大変喜ばしいことではございますけれども、一方で支援の現場においては、法律に基づく事業へ移行した結果、これまで京都府が行ってきたきめ細やかな対応が事業の対象外となってしまい、十分な支援ができなくなってしまったという問題がございます。具体的には、ひきこもりから脱出し就労に結びつけるまでの支援期間が1年に限られたために、実態に対応できない支援となってしまっているという問題があります。ひきこもりの状態に陥ってしまった方が社会復帰を行うためには、まず人との関係づくりから行う必要があります。これは、ひきこもりが長期化すればするほど長期の支援が必要となり、場合によっては2年、3年以上の支援期間を要する場合もあります。これに加えて、対人関係ができた後に就労に結びつける前段階としての軽度の就労を行いながら社会に出て行くための中間的就労による支援期間も必要となります。これらを勘案すると、現在行っている支援は実態に即したものであるということができません。また、収入や資産要件を伴うなど手続も必要であり、支援が受けづらく利用を諦めてしまうケースが生じています。ある団体では、法律に基づく事業に移行する前の平成26年度には40名の利用者がいたのに対して、移行後の平成27年度は24名にまで利用者が激減してしまったというケースもあります。一度社会復帰を目指した方が挫折してしまうと、よほどのことがない限り次の機会はありません。このことは、個人の幸せの面からも、就労による経済的な効果の面からも、生活保護など将来的に懸念される社会保障費の面からも、不幸な結果に陥ってしまうのではないしょうか。
そこでまずお伺いしたいことは、本府がこれまで日常生活等自立支援事業で行ってきたきめ細やかな対応を、次年度以降、再び行う必要があると思いますけれども、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
次に、就労準備支援についてお伺いしたいと思いますけれども、ひきこもりからの自立支援を行っている事業所に関して、就労に結びつける機能が十分に担うことができていないのではないかという指摘もございます。もちろん各個の事業所によるところも多いので、全ての事業所がそうであるということではございませんけれども、事業所さんは福祉的な側面を主として活動している団体も多いために、ひきこもりの方の居場所づくりには大変な効果を上げられますけれども、その次の段階の就労に結びつける段階に至っては、不得手なケースが多々あります。ひきこもりからの脱出支援は就労へと結びつけることができて初めて社会的な還元がなされるものでありますので、この就労準備支援に関するバックアップは特に重要なものであると私は考えております。
そこでお伺いしたいのですけれども、本府としてもこれまでひきこもりの方本人への就労準備支援を行ってきましたけれども、これからはひきこもりからの脱出支援を行っている事業所などへの就労へと結びつけるノウハウやスキルアップのための研修や指導のサポートを行っていく必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。御所見をお伺いしたいと思います。
この項の最後に、子ども若者支援地域協議会及びひきこもり地域支援センターの設置状況についてお伺いしたいと思います。冒頭に申し上げましたように、ひきこもりは、過去にひきこもった経験もある人も含めると出現率が10%程度もあるように、いわば身近な問題であります。10%程度も経験する人がいながら、多くの方はその状態から回復することができているので、自己責任に帰する向きも多々あります。しかし、そうして社会から手を差し伸べられないことが原因で10年、20年とひきこもり期間が長期化してしまって社会復帰が困難な状態になってしまっているのが、いわゆる中高年のひきこもりなのではないでしょうか。そうならないためにも、相談窓口の周知徹底、特にひきこもりの方を抱える御家族が相談に訪れやすい環境の整備が重要であると考えております。ひきこもりの若者支援を目的とした子ども・若者育成支援法においては、地方自治体に子ども若者支援地域協議会設置の努力義務を課して、これらの困難を抱える若者を支援しようとしています。
最後に、府下における子ども若者支援地域協議会及びひきこもり地域支援センターの設置状況と、これらを通じて若年者のひきこもり防止や脱出支援に対して、本府としてどのように取り組み、どのような展望をお持ちなのか御所見をお伺いしたいと思います。
次に、熊本地震を教訓とした災害への備えについてお伺いしたいと思います。
まず、危機管理転出者復職制度についてお伺いします。去る11月21日、22日に我が民進党・府民クラブ府議会議員団は熊本地震における対応の調査のために、熊本県、熊本市並びに益城町へ視察に訪問させていただきました。まずは、熊本地震に被災された方々へ衷心よりお見舞いを申し上げたいと思います。また、視察を快く受け入れてくださいました熊本県、熊本市、それから益城町の皆様に感謝を申し上げます。
さて、今回の質問は熊本県の危機管理防災企画監よりお話を伺った内容を御紹介しながら、ぜひとも本府の防災対応に、この熊本方式を反映させていただきたいとの観点から質問させていただきます。
まず、非常に効果を上げた点として、地震対応の際に職務分掌・役割分担が明確だったために、指揮系統が確立して速やかな災害対応を行うことができたと御紹介をいただきました。背景として、熊本県は水害が非常に多く毎年のように水害が発生しているということですけれども、その際の実地対応が今回の地震対応にも生かされたということでした。特に、知事が対応を委任した権限者に現場対応を任せて、指揮命令系統を明確化させたことで人命第一の災害対応を行うことができたということでした。
また、行政として毎年の人事異動は必要なのですけれども、4月の人事異動が行われた直後に災害が発生した場合、新しく異動が行われた職員も実務が把握できていない状態で職務に当たらなければなりません。しかし、実務経験が薄い職員で対応に当たることは対処がおくれることにつながってしまいます。そこで熊本県では、冒頭紹介いたしました危機管理転出者復帰制度を設けて、この問題に対処しております。危機管理転出者復帰制度は、災害発生した場合に危機管理部署から異動で転出した職員が危機管理の部署に復帰する制度です。この制度のおかげで、経験の厚い職員が実務に当たることができ、速やかな災害対応につなげることができたということでした。また、復職は災害発生時に自動的に行われることが特色で、復職の事務手続等を割愛することができるために、災害発生直後の貴重な時間を現場対応に割くことができるということでした。
まずは、この危機管理転出者復職制度について知事の御所見をお伺いしたいと思います。
次に、府下市町村と協力した災害発生後の行政事務に関する訓練の実施についてお伺いしたいと思います。熊本県が今回の地震対応で学んだ教訓として、災害発生時における行政事務の訓練の実施をもっと行う必要があったということを御紹介いただきました。さきに触れさせていただきましたけれども、熊本県は水害が毎年発生しているために、人命救助等の訓練は行ってきたけれども、行政事務の訓練に関しては盲点だったと教えていただきました。災害発生当日から「災害従事車両証明」が大量に申請され、翌日以降には「罹災証明」を初めとする建物被害認定調査関連の申請が押し寄せてきて、事務手続上の混乱が生じたということでした。また、罹災証明の発行などは都道府県ごとに書式が異なる場合もあるために、応援に来ていただいた他県の職員さんに、どの形式で処理を行うか明示する必要もあると御指摘をいただきました。これら災害発生後の行政事務の訓練を、現場対応を行わなければならない市町村を巻き込みながら京都府が主導して行う必要があるのではないでしょうか。
そこで、府下の市町村と協力した災害発生後の行政事務に関する訓練の実施に関しての御所見をお伺いしたいと思います。
次に、報道機関対応のための報道官の設置についての質問をさせていただきたいと思います。行政機関外との関係において一番大きな課題が残ったのが、報道機関や学者・企業などの来訪者、住民対応だったということを教えていただきました。特に報道機関に関して、地元の報道関係者は一定の協力を示していただいたのですけれども、東京や大阪などの中央やキー局となる報道記者の対応には非常に苦慮されたそうです。危機管理責任者の携帯番号を誰からか聞き出して、24時間、時間構わず電話をしてくる、電話の話し方や内容が現場の状況を無視して非常に悠長で時間をとられる、あるいは規制線を無視して災害対策本部に入ってこようとするなどのことがあったそうです。話を聞きながら、当時のストレスが実際に伝わってくるようでございました。また、一部の学者や企業の中には、震災発生の翌日から災害対策本部に押しかけてきて、学術研究のためのデータを提供してくれと求めたり、災害対策本部の一角に自席を設けて情報を得ようとする企業もあったそうで、これはもう良識の範疇になると思われますが、このような方々も世の中にはいるということを頭の中に入れておかなければならないという御指摘をいただきました。
ここで、大規模災害発生時の行政機関外の対応に関して、1点目、報道機関対応のための報道官を設置する必要があるのではないかということについて、御所見をお伺いしたいと思います。
また、今回の災害対応で最も苦慮されたのが、だんだんとふえていく住民対応だったそうです。発災直後は、罹災している方々の理解・協力も得られていたようですけれども、時間の経過につれて苦情も増加して対応が追いつかなくなってしまったのが、大きな教訓だったと教えていただきました。この苦情のプロセスとして、問題を抱えた住民の方が市町村などに対応をお願いするのですけれども、この対応が非常に遅かったり、あるいは電話を受けた職員と部署内での情報共有がうまくいってなかったりする場合もあって、情報が伝わらない、対応がおくれるということで、ストレスを抱えた住民が、その苦情を今度は県のほうに入れてくると。県のほうに入れた場合には、多くの場合は代表の電話番号にかけてきますので、その電話をとったオペレーターの方はどこの部署に電話を回していいのかわからずに、結局、危機管理の対策部署に電話を回して、危機管理の電話の回線がパンクするという経過をたどったそうです。対応として、熊本県は危機管理部署に10名のオペレーターを配置して住民対応に当たらせたそうですけれども、それでもひっきりなしに電話がかかってくる状態で、非常に頭を悩ませたということを伺いました。
ここで、大規模災害発生時の行政機関外の対応に関して、2点目として、災害に関する住民要望に対しての内容を専門的に扱うオペレーターを設置する必要があると思いますけれども、これに関して御所見をお伺いしたいと思います。
最後に、支援物資の配布に関しての質問をさせていただきます。熊本地震で大きな課題となったことに災害支援物資の配布がうまくいかなかったことが皆様の御記憶にあると思います。このような事態に陥った背景として、物資集積センターとして指定されていた建物が倒壊してしまったことや、職員の人手不足の状況下に、水や毛布等の寄せられた物資が、仕分けや配送作業を行う職員の人手不足によって配布できなかったということがあります。これに対して提案いただいたのが「セット・パック・リュック方式」です。これは熊本県のほうで名づけられた名前でございます。セット・パック・リュック方式とは、リュックの中に災害発生直後に必要な物資をセットして、ワンパック化して配布しようという考え方です。避難者の中には家屋が倒壊しているために、着のみ着のままで避難されている方もいらっしゃいますので、物を入れるものさえも持っていないという方もたくさんいらっしゃいます。また、支援物資の配布は可能な限り早く行い、避難者の方に安心を与える必要もあります。避難直後の物資の不足を解消するためにも、当座に必要な食料・水・保温のための物資等をパック化したものをまずは早期に配布して、後に個別に必要な物資を必要な分だけ配給するということが必要なのではないでしょうか。もちろん、これは本府だけで大量の備蓄を行うことは現実的には難しくもありますし、不経済的でもありますので、近畿圏での取り組みが適当かと考えます。このセット・パック・リュック方式を熊本県と協力しながら、国あるいは関西広域連合へ提案を行ってはいかがでしょうか。最後に、セット・パック・リュック方式に関しての御所見をお伺いをしたいと思います。
以上、まずはよろしくお願いいたします。
24: ◯議長(
植田喜裕君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
25: ◯知事(
山田啓二君) 堤議員の御質問にお答えいたします。
まず、ひきこもり支援についてでありますけれども、今年度、京都府が支援団体を対象に調査を実施いたしましたところ、現在、支援を受けている方は30代以上が4割に上っておりまして、支援機関に相談するまでに7年以上たっているケースも少なくない状況であります。先行きの見通しが立たないことに、本人はもちろん家族も大きな不安を抱えておりまして、地域社会の未来にとっても非常に大きな課題になっております。
まず、日常生活等自立支援事業についてでありますけれども、働ける力を持ちながら離職や長期間の未就労などで就労意欲が低下するなど、日常生活や社会生活でさまざまな課題を抱えている方の自立に向けた支援を行うために、国に先駆け、京都府では平成23年からモデル事業として寄り添い型の支援を行ってまいりました。こうした中、平成27年4月に生活困窮者自立支援法が施行されまして、市域は各市が、そして町村地域は府の保健所が実施機関とされたところでありまして、そのために府と市の連携推進会議を設置しモデル事業のノウハウを引き継ぎますとともに、地域のさまざまな機関との連携の強化を図ってまいりました。この制度の法施行によりまして、自立支援事業の支援対象者の決定につきましては、支援期間は1年以内との制限が設けられましたし、また収入等の要件が設けられたことから、現場において法施行時、支援が受けられないとの混乱が一部生じたところであります。しかしながら、支援期間については、1年を過ぎても実施機関が引き続き支援が必要と判断した場合には、それまでの成果、課題を踏まえて、改めて支援計画を作成することによりまして、きめ細やかな支援を継続することは可能であること、また収入等の要件につきましても一律の対応をするのではなくて、生活困窮者に陥る可能性を考慮して支援が必要な場合は柔軟に対応できることから、連携推進会議ではこうした点を徹底し、現在は法施行前と同様な支援ができる形での対応に努めているところでありまして、こうしたものを今後、連携推進会議で徹底をしていきたいというふうに考えているところであります。
あわせて、国に対しましては、対象者の状況に応じて複数年の計画が作成できるなど、柔軟な対応ができるように制度改正を要望しているところであります。
次に、ひきこもり支援団体に対するサポートについてでありますけれども、昨年制定いたしました京都府若者の就職等の支援に関する条例は、全ての若者の就職、職場定着と支援とあわせて、ニートやひきこもりなどの若者に対して再チャレンジができる場を積極的に与えていこうということで、本人や支援団体に対するサポートを大きな柱とした条例でありまして、この条例に基づいて、就職支援事業に関する計画の認定を受けた団体が実施する事業へ助成を行っているところであります。
同時に、こうした団体のノウハウを共有するための交換会の開催ですとか、京都自立就労サポートセンターによる困難事例に対する助言・支援、そして就労準備支援事業等担い手事業者研修の開催や自立・就労支援コーディネーターによる個々に合った最適な就労体験受入先の選定などに今、取り組んできているところであります。
今後とも、専門的知識の習得等を通じて、支援団体のレベルアップを図り、ひきこもりの方の社会復帰と就労支援にしっかりと京都流で進めてまいりたいと考えているところであります。
次に、子ども・若者支援地域協議会等の設置状況と今後の取り組みについてでありますけれども、京都府では子ども・若者育成支援推進法が制定される以前から、関係行政機関や府内支援団体等で組織いたします京都府青少年の社会的ひきこもり支援ネットワーク連絡会議を設置して支援に当たってまいりました。さらに、ひきこもり地域支援センターとして家庭支援総合センターを指定しまして、ひきこもりの専門相談窓口を設け、チーム絆による訪問・来所支援、職親事業による就労体験、ひきこもりを支える家族教室などを実施してまいりまして、このほか、地域支援センターのサテライトとして府内4カ所にNPO等への委託による相談窓口を開設し、これまで延べ約7,800件の支援を行ってきたところであります。
そうした面では、一応の支援体制というのはできているところでありますけれども、しかしながら、やはり多数の潜在的なひきこもりの方がいらっしゃるんじゃないかという現状を踏まえますと、もう一段階、実態把握を深めていく必要があるというふうに考えておりまして、現在、関係機関とも相談しながら実態調査の方法などを検討しているところでありまして、こうした調査結果がさらに生かされるように、チームによる市町村と連携した要支援者への訪問支援などの対策を強化していくという調査と強化の両方から支援の取り組みというものを進めていきたいと考えているところであります。
次に、熊本地震を踏まえました災害への備えでありますけれども、最初に危機管理転出者復職制度についてでありますけれども、京都府の場合には、あらかじめこうした災害時におきましては、通常業務を離れて災害対応業務に専任する職員を、経験者も含めて指定いたします非常時専任職員制度を既に整えているところであります。今年度におきましても、まず危機管理監の直属スタッフとして業務に従事する第1号非常時専任職員を13名、そして災害対策本部等の初動業務に従事する第2号非常時専任職員を230名、そして主に市町村の支援や連絡調整業務に従事する第3号非常時専任職員を109名、合わせて352名についてこうした危機管理部署の在籍経験等にも留意しながら指定をいたしまして、そして災害時におきましては、この体制を踏まえて、この人たちがまず通常業務を離れて当たるという体制を整えているところでありますので、このあたりで、私どもといたしましては対応していきたいなというふうに考えているところであります。
次に、市町村と協力した災害発生後の行政事務の訓練についてでありますけれども、関西における大規模広域災害発生時には、関西広域連合におきまして関西広域応援・受援実施要綱によりまして被災市町村事務全般の支援を行うことにしておりまして、その対応能力の向上を図るためにも業務研修などに取り組んでいるところであります。
さらに、京都府におきましては、被災者の迅速な生活再建を支援するために、建物の被害調査から罹災証明の発行、各種支援金の支給までを一貫して処理できます被災者生活再建支援システムを平成27年7月に、単独システムを持つ京都市を除いた府内全市町村で導入をしているところであります。
このところ災害救助法適用、被災者生活再建支援法の適用を受ける災害が3年連続起こったということで、一応このシステムを整備いたしまして、本システムを活用した被災地支援を行うため府市町村職員から成る京都府被災地緊急サポートチームを編成して、毎年具体的な業務フローやシステムの操作手順などの研修を実施しているところでありまして、実は熊本地震におきましても、このサポートチームに登録されている職員を派遣して、現地の運営支援を行ったところでありまして、そうした面では、実践的な支援も含めて、今、鋭意その能力アップに努めているところであります。
次に、報道機関の対応のための報道官の設置についてでありますけれども、報道責任者を指定をしておくことは重要であると思っておりまして、京都府の場合には、これは広報課長等が当たる形になっていくんですけれども、先ほど申しました災害時における非常に混乱した状況、これは私も就任すぐに、まずSARSという台湾で発生した病気の患者さんが近畿を回ったという事例が起き、大混乱に陥ったことがございまして、そのときもマスコミ対応で大変苦慮したところであります。このSARSの対応を反省いたしまして、翌年に鳥インフルエンザの騒動が起きましたときに、私どもは、もはや報道機関対応というのは特別にせずに全てを公開で行おうじゃないかと。対策本部への報道規制線もつくらない、対策本部会議はフルオープンで行っていくという形をとりまして、その中で一々記者発表はしない、対策本部会議はフルオープンなので、これを見ていただければそれ以上つけ加えることは何もない、そしてその中で、会議終了後、報道機関の質問はその場で私が受け付けるという体制をとりました。これによりまして、実は余計な、その次の一々報道発表資料をつくり記者会見を行い、そして質問を受けるという二重手間な体制は全て排除させていただきました。なかなか厳しい状況だということで、職員の皆さんもなれるのには大分苦労されたんですけれども、私は二重手間を省く上では大変効果的にできたと思っておりまして、その後も災害対策の場においても、全てフルオープンということをずっと続けているところであります。
そうした点では京都府につきましては、マスコミ対応については一定そういう方向で乗り切る、またマスコミの皆さんも対策本部会議でもっと資料が出ているのではないかとか、もっと違うことが話し合われているのではないかということで一生懸命質問をされてこられる方も多かったのですけれども、これ以降はそういう問い合わせもなくなったので、私は急がば回れではありませんけれども、この方式が一番適切ではないかなというふうに考えているところであります。
住民対応のオペレートについてでありますけれども、これは災害の状況に合わせまして、災害対策本部に最大20回線の専用コールセンターを速やかに設置いたしますとともに、専任の職員を配置するなどの仕組みを整えているところでありますけれども、災害の規模によってはさらに必要になってくる場合もありますので、府のホームページやFAQとしての取りまとめの掲載とかSNSの発信も含めて、体制を整えていきたいと思います。
セット・パック・リュック方式でありますけれども、確かに非常に有効な方式であるというふうに考えておりますけれども、御指摘がありましたように全員分用意することは物理的にも不可能でありますし、かえって府民の皆さんからすると、非常時災害対応は何かあれば行政がしてくれるんだという形になってしまいますので、本来は最初の3日程度の食料、非常用のパック、これはDIYのお店とか大規模なところに行けばみんな売っている話でありますので、ぜひとも、やはり個人でまずそろえていただくというのが基本であると思っております。しかしながら、大変弱い立場にある方とか高齢者とかでなかなかそうした用意が準備できない方々がいらっしゃるのも事実だと思いますので、行政としましては、そういった方々向けに、やはり対応を一定していかなければならない部分があると思っておりまして、こうしたものにつきましては関西広域連合が本年8月に公益社団法人日本青年会議所と協定を締結いたしまして、必要な食料、水、携帯トイレなどのパッケージ化した物資・ストックAID(エイド)を構成団体に届けるシステムについて整備をしたところでありまして、大体、全国で約1万2,000個確保されているところであります。今後、私どもといたしましても、同様の協定を結ぶことによって一定のセットメニューを用意するとともに、府民の皆様には、できる限り自助でこうしたセット・パック・リュック方式のものを用意していただくという呼びかけとの両立を図りながら、今後、対応を進めていけたらというふうに考えているところであります。
26: ◯議長(
植田喜裕君) 堤淳太君。
〔堤淳太君登壇〕
27: ◯堤淳太君 個人の力ではどうしようもないことに対して、災害対策であったりそういったものに対して一番機能を働かすための行政機関でございますので、対応の形を十分に整えていただきますようお願いいたします。
また、青年会議所さんのすばらしい活動も御紹介していただきましてありがとうございます。セット・パック・リュック方式に関してですけれども、準備をしていたとしても自宅が倒壊してしまったために、そもそも備蓄をとりに行けないというケースもありますので、立場が弱い方とともに、そういうケースも十分にあり得るということを想定した上での準備を進めていただきたいと思います。
また、ひきこもりからの脱出支援について、本当に難しいところに行っていると思います。利用者の方であったり、また事業所の方から見ると、これまで府の事業は本当にすばらしいものをやってきていらっしゃいました。それが国の事業に移った途端にレベルがダウンしてしまったというのが利用者であったり事業者の方の本音だと思っております。今、形での対応を整えていただきましたので、これから中身のほうを充実させていっていただきますようにお願いしたいと思います。
ひきこもりの方は、楽をしたいからひきこもっていたケースというのは非常に少ないと思います。何かの事情があって、ちょっと対人関係を遮断してしまった、それが長期にわたっていって、どんどん外とのつながりがなくなってしまっている。でも、本音の部分では、社会であったり別の方とつながりたいというところがあります。仕事をするのはもちろん幸せなこと、自分の幸せづくりでもありますし、仮にひきこもりからの脱出ができなかった場合は、親を殺したり、周りの方を傷つけたりというような非常に不幸な結果にも陥ってしまいますので、ぜひとも、このひきこもりの支援というのを充実させていただきたいと会派からお願いを申し上げまして代表質問とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
28: ◯議長(
植田喜裕君) この際、午後3時35分を目途に本会議を再開することとし、休憩いたします。
午後3時19分 休憩
────────────────────
午後3時39分 再開
29: ◯副議長(巽昭君) 休憩前に引き続き、会議を行います。
次に、岸本裕一君に発言を許します。岸本裕一君。
〔岸本裕一君登壇〕(拍手)
30: ◯岸本裕一君 自由民主党の岸本裕一でございます。このたびは、初めての代表質問の機会を与えていただき、自由民主党府会議員団の皆様に心から感謝を申し上げます。
それでは、自由民主党府議会議員団を代表いたしまして、通告に従い、山田知事並びに関係理事者に質問をさせていただきます。
まず第1は、現下の大問題、北陸新幹線の小浜舞鶴京都ルートの実現についてお伺いいたします。
北陸新幹線の敦賀-大阪間のルートにつきましては、昨年8月に与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームに北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会が設置され、これまで長年未決定であった敦賀-大阪間のルート問題について、ようやく本格的な検討が開始されたのであります。その後、沿線府県の知事、JR西日本などの鉄道事業者、学識経験者の意見聴取などが実施され、本年の4月には中間とりまとめが行われました。
その中間とりまとめでは、幾つかのルートの中から、敦賀から小浜、舞鶴を経由する小浜舞鶴京都ルート、敦賀から小浜を経由し、直接京都駅へ結ぶ小浜京都ルート、そして敦賀から滋賀県の北部を通り米原の東海道新幹線に接続する米原ルートの3案に絞り込まれ、国において、概算事業費、需要見込みなどのルート決定に資する項目の調査が実施されることとなりました。加えて、京都-大阪間については、けいはんな地域で整備が進められている関西文化学術研究都市付近を経由するルートについても、参考として調査されることとなりました。我々府議会におきましては、この中間とりまとめを受け、6月の定例府議会におきまして、北陸新幹線敦賀-京都間については小浜舞鶴京都ルートが、そして京都-新大阪間については関西文化学術研究都市付近を経由するルートが、京都百年の計のみならず、国家百年の計に値する最適なルートであり、国におかれては、国策として地元負担や並行在来線の問題に十分な配慮をした上で年内に選定し、全線整備の早期実現を求める「北陸新幹線敦賀・大阪間の整備に関する意見書」を決議し、政府、国の各機関へ提出しました。また、地元では、舞鶴市を初めとする北部の5市2町で「京都府北部ルート誘致促進同盟会」を設置され、北部5市2町と山陰沿岸地域の市町村とで組織する「山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議」との連携のもと、京都府北部の重要性、将来の山陰新幹線延伸と日本海側国土軸の形成における優位性などを訴え、小浜舞鶴京都ルートの決定に向け、誘致活動を精力的に展開されておられます。
南部地域におかれましても、山城12市町村で「京都府南部ルート誘致促進同盟会」を設置され、山城地域の観光振興、関西文化学術研究都市の整備推進のために北陸新幹線が不可欠として、関西文化学術研究都市付近を経由するルートの誘致活動に取り組まれております。私ども地元選出議員もこの2つの同盟会に参画し、地元と一緒になって取り組んでいるところであります。
本府においても、これまで国に対し、小浜舞鶴京都ルート等の実現に向けた積極的な主張や提案を繰り返し行われ、去る10月末には、山田知事、舞鶴市長、精華町長等、地元の首長、府及び市町村議会、そして京都府選出などの多数の国会議員が参加する中、東京都内で「山陰新幹線の早期実現と北陸新幹線京都府北部ルート・南部ルートの決定を求める決起大会」が開催され、府、市町村、そして議会が一致団結して、小浜舞鶴京都ルート及び関西文化学術研究都市付近を経由するルートの実現を強力にアピールされたところであります。
このような中、11月11日に国土交通省が整備新幹線建設推進プロジェクトチームに3つのルートの調査結果を報告しました。その結果では、事業実施の判断材料の一つとなる費用対効果(B/C(ビーバイシー))が、小浜舞鶴京都ルートが0.7、小浜京都ルートが1.1、米原ルートが2.2とされ、小浜舞鶴京都ルートのみが1.0に達せず、投資に見合わないとされました。整備新幹線建設推進プロジェクトチームでは、この報告を受け、各府県の知事やJR西日本のヒアリングを経て、年内に一定の方向性を示すとされており、去る11月30日には知事も検討委員会において、地域経済効果による独自のB/Cの試算結果により小浜舞鶴京都ルートが投資に見合うことなどを強く主張されるなど、検討委員会での検討も大詰めを迎えております。
京都府北部地域は人口30万人を有する日本海側の重要地域であります。北陸からこの地域を経由する日本海側国土軸を形成し、この地域から太平洋側への縦の国土軸を形成することは、国の進める日本海・太平洋2面活用型国土の実現に大きく寄与することが期待されます。また、将来、山陰新幹線の整備による日本海側国土軸の延伸を図る上でも、小浜舞鶴京都ルートは最も効果的・効率的なルートであります。また、京都-大阪間については、将来のリニア中央新幹線の整備とも相まって、関西文化学術研究都市付近を経由し、関西国際空港へのアクセスを格段に向上させることで、国家プロジェクトである関西文化学術研究都市に世界中から研究者が集う環境が整い、我が国の科学技術等の発展に大きく寄与するとともに、沿線地域の開発、地域活性化などの大きな効果をもたらすことは必定であります。私は、この小浜舞鶴京都ルート、そして関西文化学術研究都市付近を経由するルートが、あらゆる面から考え、北陸新幹線のルートとして最適なルートであり、府民に大きな利益をもたらすものと確信しております。
そこで知事は、現在の情勢をどのように受けとめ、今後、小浜舞鶴京都ルート及び関西文化学術研究都市付近を経由するルートの実現に向け、どのように巻き返しを考えておられるのか、御所見を伺います。
次に、今定例会に提案されている予算案のうち、北部産業創造センター(仮称)整備費についてお伺いいたします。御存じのとおり、この案件は我が会派の四方議員の念願であり、本来であれば四方議員に御質問いただくべきところ、タイミングもございますので、僣越ではございますが、私から質問をさせていただきます。
そもそも、北部産業技術支援センター・綾部は、今から10年前、グンゼの建物を綾部市を介して無償で借り受け、府北部地域の中小企業に対する技術支援、機器の貸し付けなどを行ってまいりました。ことしの6月議会で四方議員は、「北部地域の雇用について、量の拡大と質の向上を目指すとき、北部産業技術支援センター・綾部の施設強化が重要であり、北部の企業集積をさらに進めるためにも本府の役割は本センターの建てかえである」と質問されました。今まさに、その熱い思いが形になっていくわけであり、その思いを胸に私も質問をいたします。
さて、府北部地域の活性化に向けては、昨年の京都縦貫自動車道の全線開通による効果も期待される中、「海の京都」や「森の京都」また京都舞鶴港の振興策など、さまざまな施策を展開されており、高く評価をするものであります。このような状況の中、地域経済の活性化に向けては、やはり元気な中小企業をより多く育成することが重要で、特にものづくり企業の技術力・競争力の向上による活性化は北部経済を牽引するエンジンとして不可欠なものと考えます。特に、府北部にはすぐれたものづくり企業が集積しており、高度な機械金属加工技術などが育まれているとともに、福知山、綾部については、長田野、綾部、アネックス京都三和の3つの府営工業団地を擁する北近畿随一の工業集積があり、大手企業の立地が進んでいることや、京都工芸繊維大学のブランチ校が進出するなど、地域の資源を生かし、産学公連携などを行うことで地元中小企業の発展に大きな可能性を秘めていると考えております。
しかしながら、現代の製造業は、コスト競争、製品ライフサイクルの短縮化、技術の高度複雑化、市場ニーズの多様化などが進行し、単によいものを安く提供するだけでは不十分な時代であり、多くのマーケットニーズにきめ細かく応えた、より付加価値の高い製品や、それらの開発・生産に必要な高度な製造プロセスなどが求められる時代であります。特に近年は、身の回りにあるものにセンサーが組み込まれて、直接インターネットにつながり、物同士、あるいは物と人とが相互に通信できるようになる仕組みであるIoT技術が製品や製造プロセスに取り入れられ、中小企業もより高度なものづくり技術に対応していかなければならない時代が到来していると感じております。今後は、府の中小企業支援施策についても、このようなものづくり技術の新たな潮流にも速やかに対応できるよう、一歩、奥の深い支援をしていく必要があると考えております。
こうした状況の中、今回提案されている北部産業創造センター(仮称)整備費は、従来、JR綾部駅前に立地していた北部産業技術支援センター・綾部をリニューアルするもので、京都府、綾部市、グンゼ、京都工芸繊維大学の4者で整備することについて合意したとされております。北部地域のものづくり企業を強力に支援し、雇用についても、量の拡大と質の向上を目指すには北部産業技術支援センター・綾部の施設強化が重要であり、これまでも我が会派はこの整備計画について注目してきたところであり、大いに期待を寄せているところであります。
そこで、知事にお伺いいたします。
今回の整備費計上について、どのような施設を目指し、今後、北部地域のものづくり産業にどのような効果を期待するのかなど、北部産業創造センター(仮称)の整備にかける知事の思いをお聞かせください。
31: ◯副議長(巽昭君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
32: ◯知事(
山田啓二君) 岸本議員の御質問にお答えいたします。
岸本議員におかれましては、ただいまは北部振興施策に対しましては、高い評価をいただき、ありがとうございます。
まず、北陸新幹線小浜舞鶴京都ルートについてでありますけれども、御指摘にありましたように、去る11月11日に敦賀-大阪間の調査結果が国土交通省から与党整備新幹線プロジェクトチームに報告をされまして、先ほどのお話のように、このルートについてB/Cが1.0を下回るというお話が出たわけであります。私は中身を見せていただいて、正直言って驚きました。このB/Cをどうやって出すのかということについては、我々は余り勉強してこなかったんですけれども、見せていただきますと、中身は現在の旅客流動、つまり、今、北陸から大阪や中京圏や、京都も含めてですけれども、行ったり来たり、どれだけ乗客が動いているか。それに時間短縮の効果を掛けて、時間短縮効果を金額に換算したものを掛けることによって費用便益を出しているわけでありまして、端的に言えば、大阪など大都市の方がどれだけ便利になるかということを示しただけのものでございます。しかし、私が京都の知事として新幹線の誘致をお願いしているのは、別にそういう人が便利になることではなくて、例えば舞鶴に新幹線が来ることによって、まさに地域が住みやすくなる、観光客は来る、企業が来る、人は住む、こうした消費や設備投資がふえる地域の将来の可能性が広がるということを期待しているからです。このことは、京都縦貫自動車道が開通して本当に便利になって、多くの観光客が来られたことで端的に示されておりますし、実際問題としまして、九州新幹線や北陸新幹線が金沢まで開通したことによって、設備投資の増加や観光客の入込客数もふえるなど、きちっと効果として出てきている。こういう地域経済効果を期待して、私どもはこの誘致をしているわけであります。
それからすると、こうした効果について算定をすべきではないか。実際問題としましてB/Cの効果については、国土交通省のマニュアル上も地域経済効果の項目はあって、それぞれあるんですけれども、最近、バブルや極端な不況の中でこの効果が算定をしづらいということもあって、先ほど申しましたような利用者便益だけに偏ったB/Cが使われているということでございます。しかしながら、今、安定成長の時代に入り、先ほど申しましたように、九州新幹線や北陸新幹線の事例も含めれば、十分に地域経済効果については算定できるのではないかということで、北陸新幹線について、九州新幹線と北陸新幹線の金沢までの開通の効果そのものを指標にして今回の舞鶴に適用させていただいたところ1.0を超えているということでありましたので、しっかりとこれは地元に対する貢献が期待できるということをこの前申し上げた。同時に、それだけではなくて、まさにこの地域、今まで原子力発電所など関西に対しましても大きな貢献をしていただいた地域、敦賀港、舞鶴港という有力な港湾を抱えて、この地域に新しい発展の力を与えていくことができる。そして、その新しい発展の力を今度は山陰地方にも広めていくことができる。日本海側が長い間、不利な状況・環境のもとで冷遇をされてきた事態に対して、私たちは新しい日本海側の自立を踏まえて、日本海側と太平洋側がともにウイン・ウインの関係になるような日本というものをつくっていくべきではないのか、そういうことを考えて、それができるかできないかについて判定をされたならともかく、大都市との交通需要だけで便益を算定するというのは余りにも一方的な便益ではないかということを主張させていただいたところであります。
また、京都-大阪間につきましては、単なる時間短縮ではなくて、関西国際空港へのアクセスなども視野に入れて関西文化学術研究都市を経由するルートにより、つくばに並ぶ国立サイエンスパークを発展させ、近畿の新しい中核、交通のハブをつくることによって地域全体がさらに大きく発展する可能性がある。これも京都縦貫自動車や新名神で証明済みでございますけれども、そうした可能性を訴えたところでありまして、こうした内容については、幅広く府民にも御理解いただけるよう府のホームページにもアップしたところであります。まさに、現状を前提として、現状を肯定し、太平洋側と日本海側の格差をこのまま放置する形でルートを選定するのか、それとも日本海側に対する将来の構造というものを明確にしてルートを選定するのか、まさに判断の問題であり、どちらを判断するのかについて、今、国において正しく判断されることを要望しているところであります。
これから与党PTでは、年内に一定の方向性を示すとされており、京都府としましては、府議会、市町村、山陰地域とも連携し、このルートの必要性をしっかりと訴えてまいりたいと考えているところであります。
次に、北部産業創造センター(仮称)についてでありますが、6月定例会で四方議員にもお答えしましたとおり、ものづくりをコンセプトにした新たな交流創出エリアを目指して、京都府、綾部市、グンゼ株式会社、京都工芸繊維大学の4者で検討を重ねてまいりました。京都府といたしましては、先ほどお話がありましたように、これからIoT技術の進展を受けた、まさに新しい世の中、インダストリー4.0(フォー)という言い方をしておりますけれども、こうした時代に、北部が今まで蓄えてきたものづくり中小企業の蓄積を生かして、新時代に飛躍できるようにしっかりと振興策を講じていきたいという思い、そしてまた、グンゼにおかれましては、今まで私どものために綾部駅前という好条件の土地を利用させていただきましたけれども、地域住民の雇用や不足している立地技術者の住環境の整備など、地域貢献をしていきたいという思い、また綾部市は、産業や市民の暮らしの基盤づくりを着実に進めるために新しい交流拠点をつくりたいという考え、さらに工芸繊維大学も研究成果を生かした地域貢献への取り組みなど地域における「地(知)の拠点」になりたいと、こういうい4者の思いが合致いたしまして、先般、合意に至ったわけであります。財源的にはこうした地域の思いを訴え、国において地方創生の核をつくるための新しい交付金を補正予算で組んでいただきましたので、今議会でこの交付金を活用したハード整備の予算をお願いしているところであります。その点では、国の思いとも合致していると私は思っております。
今後、本センターは企業、研究者、大学院生等多様な人材の交流を促すためのコワーキングスペースの設置、こうしたシーズを事業化につなげイノベーションを創出するための大学の研究室や中小企業技術センターのワンストップ支援施設を設置する。そして、先ほど申しましたような先端産業やIoT技術を活用したインダストリー4.0の推進を北部版で行っていきたいというふうに考えておりまして、グンゼが研究を進める生体吸収性のある医療素材とAIやIoTを活用したロボット技術の掛け合わせ等、本当に未来が広がっていくものを北部で研究できるのではないか、振興できるのではないか、中小企業を勇気づけることができるのではないかなというふうに考えており、平成30年度のオープンを目指したいと考えているところであります。
33: ◯副議長(巽昭君) 岸本裕一君。
〔岸本裕一君登壇〕
34: ◯岸本裕一君 新幹線の問題につきましては、知事から大変熱意あふれる御答弁をいただきまして心強い限りです。我々自民党も、西田昌司京都府連会長を先頭に頑張っております。連携して頑張っていきたいと思います。
それでは質問を続けます。
第3に、米づくりの振興策についてお伺いいたします。
2013年12月に、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されましたが、和食の中心となる食材が米です。御飯とおかずの食べ方の文化こそが和食であり、栄養バランスのとれた健康的な食生活を送る基本となるものです。しかしながら、国民のライフスタイルの変化や食生活の多様化により、国内の米の消費量が毎年どんどん減少しており、昭和37年に年間1人118キログラム食べていたものが、平成26年には年間1人55キログラムとなっており、半減しました。また、既に日本は少子高齢化による人口減少社会に入り、食欲旺盛な若年人口が減り、食の細い高齢者が増加することから、米の消費量の減少傾向はしばらく続くと見られております。加えて、最近では糖質制限ダイエットと称して、女性を中心に御飯を減らしたり、全く食べなかったりする人が出てきています。また、国の調査によると、20代男性の約2割が1カ月間、一回も米を食べていないというびっくりするような結果も出てきております。
一方、米の生産状況に目を向けますと、国においては昭和46年から減反による米の生産調整を進めており、平成16年からは生産数量目標を配分する方式に転換してきたものの、米の生産調整を拡大しても米価が下落傾向にあるなど、米農家にとっては長らく閉塞的な状況が続いております。そのような状況の中、本府におかれては米からの脱却を目指し、全国に先駆け、平成元年から京野菜を軸にブランド化を進めてこられ、米と野菜の複合経営により生産者所得の向上を図ることで、平成10年には府の農業産出額1位の品目が米から野菜に逆転するなど、大きな変化が出ています。しかしながら、農業産出額のうち野菜産出額が1位といっても本府の経営耕地面積の8割が水田であることから、全てを野菜に転換することは現実的には難しく、高齢化のため野菜の作付が難しく、米しか作付できない地域もある現実を直視すれば、耕作放棄地を防ぎ、農地や農村を守るためには、今後とも米づくりが重要です。
水田に豊かに実る黄金色の稲穂と、その上を飛び交う赤トンボは日本の原風景であります。また、水田は雨水を一時的に貯留し、洪水の防止に役立つとともに、水辺の環境がたくさんの動植物を育む場になるなど米の供給以外の多面的機能がありますが、このような機能は水田で米づくりという農業生産活動が行われるからこそ発揮されるものです。
さて、国は平成30年産米から米政策を抜本的に見直すこととしておりますが、私自身も現場から、「何を目標に米づくりをしたらよいものかわからない」などという声を直接お聞きしております。こうした中にあって、京都府におかれては国の米政策の見直しを控え、本年度「京の稲作と農地を守るアクションプラン」の策定を進めており、平成30年を待つことなく来年の29年産米から前倒しして米の新たな戦略を考えておられるところであり、今後期待するものであります。
そこで、知事にお伺いいたします。
本府の農業・農村を守る上で重要な米の生産について、平成30年産米からの国の米政策の見直しを見据え、今後の施策展開の基本的な考え方や方向性についてどのようにお考えでしょうか、お伺いいたします。
35: ◯副議長(巽昭君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
36: ◯知事(
山田啓二君) 米の振興策についてでありますけれども、国は平成30年産米から米政策を見直して、経営の自由度・自立度を高めるために生産者が米の生産販売量を決められるようにすることにして、そのために行政による生産数量の目標配分を廃止する。そして、米の直接支払交付金を廃止するというふうになっています。こうした見直しというのは、消費者に人気のあるブランド米の生産県にとりましては収益増につながる可能性もありますし、また意欲的な米の生産者の意欲というものをしっかりと踏まえるという点ではいい点があると思いますけれども、その中で、ブランド力や知名度の劣る京都米にとりましては、売り上げの減少とか価格低下による生産者の意欲減退ですとか、さらには耕作放棄地の増加につながるおそれもありますし、特に中山間地域の多い京都府では大規模な水田経営が難しいために、そうした面についての対策というものを充実していかないといけないというふうに考えているところであります。この点から京野菜の導入を進めてまいりましたけれども、農地の8割は水田でありますし、高齢化が進むので、全てが手間がかかる京野菜などでカバーできる状況にはありません。それだけに、農業・農村を守るためには、これまで進めてきた一等米比率の向上ですとか、減農薬等の環境に配慮した特別栽培米の生産拡大に加え、今後は、流通や販売の各段階でも収益の向上と生産性の効率化を目指した新たな戦略が必要ですし、その中においてそれでもまだ十分でない地域には、新たな農村経営の目標が必要であるというふうに考えております。
その中で、収益の向上を図る取り組みとしましては、八幡市のお米が、先般、お米番付2016年の入選米に選ばれるなど、本当においしいお米の生産には期待をされているところは随分ございますので、京都府独自でもおいしいお米コンテストを開催いたしまして、積極的に選ばれたお米を料亭や外食産業、さらにはネット販売などの流通の多角化の中で奨励をしていきたいと考えておりますし、主食要の米だけではなく、祝(いわい)や京の輝きといった酒米の生産を推し進めてまいりましたけれども、さらに和菓子ですとかみそに適した加工用米など、京都の地場産業との結びつきを強くしていくことによって多様な米の生産を確保していきたいと考えております。
また、インターネット上に存在しますお米や御飯に対する消費志向の膨大なデータの分析を行って、企業や大学とも連携し、米を利用した形での6次産業化の取り組みを進め、京都の場合、やっぱり大消費地に近いというメリットがありますから、こうしたものを取り出して収益の向上を図っていきたいと思います。
生産技術面では、丹後コシヒカリが特A評価を12回獲得しているんですけれども、だんだん温暖化が進んでまいりますと北のほうのお米の質が上がってきているという点がありますので、こうした観点を考えて、やはり温暖化の中でもいい形でのお米ができるような、コシヒカリに偏った品種構成から新しい京都のオリジナル米の開発等を目指していきたいと思います。
同時に、私どもといたしましては、府内だけでも需要は年間16万トンあるわけですね。それに対して府内産米は8万トンしかないわけであります。ですから、消費地と生産地を密接に結びつけていく。さらにそれに観光を加えていく。こうした農業だけではなくて、農業の持っている季節性というものを織り込んだ形、さらには京野菜やさまざまな6次産品を盛り込んだ形で農村全体の生産力をアップしていく中でお米を守るという半農半X的な部分も含めて、農村全体の経営を改善していくというのを京の農業応援隊による伴走支援を初めとして、京都のDMOも示しながらこれから盛り上げていくことによって、お米の生産というものについての確保も図っていけたらというふうに考えているところであります。
37: ◯副議長(巽昭君) 岸本裕一君。
〔岸本裕一君登壇〕
38: ◯岸本裕一君 近い将来、中国の人たちが安全性を重視して日本の米を買うようになりますと、その場合に、京都米というのが京野菜と同じように京都ブランドになって、どんどん買われる時代が来ると思います。そういった時代も見据えて、どうぞ生産振興を図っていただきたいと思っております。
さて、あと2本、文化ネタでございます。
第4に、北山文化ゾーンの今後のあり方についてお伺いいたします。
本府におかれては、北山地域の賀茂川、北山通、下鴨中通、府立大学の南側に囲まれた地域を北山文化環境ゾーンと位置づけられて、「文化と環境に包まれたやすらぎと交流の中で、京都を世界に発信する街」「開放感あふれ、歩いてまわりたくなる街」をコンセプトに、府民が憩い、安らぐ場として、また文化・環境・学術の交流・発信拠点となるよう整備を進めておられます。この地域は、府立植物園、陶板名画の庭を初め、京都コンサートホールなどが集積し、自然の中に文化が共生する豊かな地域であるとともに、多くの研究者や学生が集うアカデミックな地域でもあります。これまで本府においては、府立大学の教養教育共同棟を初め、府立植物園におけるカフェやボタニカル・ウインドウの整備など、北山地域の魅力向上に努めてこられました。そして、このたび、いよいよ府立京都学・歴彩館がオープンするに至り、北山文化環境ゾーンは新しいステージを迎えることとなります。また、北山通りの北側を中心にカフェやレストラン、ブティックなどが軒を連ね、京都の中で最もおしゃれな町並みを形成するなど、今後、なお一層の発展が期待される地域であり、文化庁の京都移転を契機として、文化と多様な産業との融合による新たな文化創造の可能性を秘めたポテンシャルの高い地域であると考えております。
こうした魅力ある地域の北山文化環境ゾーンについて、知事は今後どのようなビジョンのもとで国内外に発信し、さらなる活性化を図ろうと考えておられるのか、お伺いします。
また、国内外からのさらなる集客を図り、にぎわいを創出していくためには、レガシーとポテンシャリティーを取り込んでいく必要があるのではないかとも感じるところであります。常識としての北山文化は、室町時代の足利義満の金閣に代表される文化をイメージされます。こうした国内外の広範なイメージを取り込まないで見過ごすのはもったいない限りです。さらに、地下鉄北山駅から2駅行ったところにはコンベンションの中心、国立京都国際会館があります。西は金閣から東は国立京都国際会館までを含むエリアを想定してみましょう。その中には、立命館大学を初めとする多くの大学も立地しています。その上に、ハード整備による町並みの形成や北山文化環境ゾーン内の各施設の連携はもとより、今後はソフト面で、上賀茂や宝ヶ池、松ヶ崎などの周辺地域の各施設との連携を図っていくことも重要であります。そうした北山文化環境ゾーンのイメージ戦略と内容充実の上に、確たるブランド力が形成されていくものと考えております。各施設間の連携による多様な協働事業の実施を通じて、北山地域の魅力をますます向上させていくことが必要であると考えますが、知事は、周辺地域も含めたゾーン全体をどのように展開していくべきと考えておられるのか、お伺いします。
さらに、先ほど述べました府立京都学・歴彩館のオープンに伴って、府立総合資料館が立地する北山文化環境ゾーンにとっての一等地が遊休地となりますが、今後の北山地域の発展にとってこの土地の活用は非常に重要であると考えており、現総合資料館の跡地活用の検討を行い、整備の方向性等について構想をまとめていく必要があると考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
最後に、文化財の保護対策の強化と教育分野への活用について、知事及び教育長にお伺いします。
周知のとおり、府内には有形・無形のさまざまな文化財があり、現代に受け継がれております。これらの文化財が長く保護されてきたのは、文化財を所有されている社寺など多くの方々の御努力と関係団体の支援のたまものであり、感謝を申し上げるとともに、後世に良好な状態で伝えていくことは現代に生きる我々の使命として継続して努力していかなければならないと考えております。
文化財を保存、継承するためには、適切な時期に修理などをする必要がありますが、その場合、制作された当時の伝統的な技法や材料を用いて行わなければ文化財の価値が損なわれます。しかし、一般的な方法と比べ、修理にかかる費用は高額であり、所有者からは負担軽減のため行政の支援を求める声を多く聞いているところであります。大規模災害が頻発している現状を踏まえれば、災害対策の観点からも支援が必要ではないかと考えております。本府では、知事部局と教育委員会が連携をして、本年4月に京都府の教育等の振興に関する大綱を策定されたところですが、その中で、京都が世界に誇る文化財の保護と活用を盛り込まれ、取り組みを進めておられると伺っております。文化庁が移転するこの京都府において、世界に誇る貴重な文化財が失われないよう保護と活用を本府が中心となって積極的に進めるべきと考えますが、知事の決意をお聞かせください。
本府には、京都の長い歴史と文化に培われた非常に多くの文化財が存在しています。例えば、国が指定する重要文化財の建造物は296件、639棟と一貫して全国一であり、国宝の建造物も、昨年八幡市にあります石清水八幡宮の本殿など10棟が国宝に指定されたことにより、72棟と全国一となったところです。また、美術工芸品の重要文化財は全国2位の1,873件を占め、特別名勝の庭園も全国最多の11件となっており、国宝と重要文化財の合計が平成28年4月現在で2,821件となっています。これらの貴重な文化財の一部は世界文化遺産「古都京都の文化財」の構成資産にもなるなど、世界的にも非常に貴重であり、京都の観光にも大いに貢献しており、最近の外国人観光客の多さには目を見張るものがあります。
一方、府指定や府登録などの文化財件数は、平成28年4月現在729件と全国6番目の件数であり、国が指定する重要文化財に比べて少ないのです。未指定文化財であった伏見稲荷大社の権殿や楼門などの7棟が平成26年1月に国の重要文化財として追加指定されたように、府が指定していない文化財であったものが、いきなり国の重要文化財に指定される例もあります。私は、本府の歴史を考えれば、本府にとって重要な文化財はまだまだたくさんあるのではないかと考えております。未指定文化財も失われることがないよう、何らかの保護策を講じるとともに、文化財としての価値を認め、府指定等文化財としての指定を積極的に進めるべきと考えますが、教育長の御意見をお伺いいたします。
また、このような貴重な文化財を後世に受け継ぐとともに、そのすばらしさを世界に発信していくためには、文化財の所有者の努力だけに頼るのではなく、将来の社会を担う子どもたちや若い世代にその価値を学んでもらい、受け継いでいく意識の醸成を図ることも重要です。学校教育の中で文化財の大切さについて学んでいくことが非常に意義あるものであると考えますが、京都が誇る文化財を活用し、若い世代へ継承する取り組みを今後どのように進めていかれるのか、教育長のお考えをお聞かせください。
39: ◯副議長(巽昭君) 山田知事。
〔知事
山田啓二君登壇〕
40: ◯知事(
山田啓二君) 北山文化環境ゾーンについてでありますけれども、北山のエリアは植物園、総合資料館、京都コンサートホール等、本当に集積をしておりまして、府立大学等の研究者や学生が集い、鴨川の豊かな自然にも恵まれた文化学術環境が共生し、府民の交流の憩いの場として、本当に岡崎と並ぶ高いポテンシャルを有している地域だと私は思っております。
しかしながら、個々の施設のつながりが今までは乏しくて、面的な魅力が十分に生かされていなかったために、府民に開かれた文化のゾーンとして転換をしていこうではないかということを目指してまいりまして、植物園北側の賀茂川門やボタニカル・ウインドウ、そしてカフェ、教養教育共同化施設の整備等に取り組んできたほか、来る12月23日には京都学の研究と府民の交流拠点として府立大学文学部とも一体となった京都学・歴彩館を一部オープンすることになりました。今後、プロムナードや植物園の北泉門といった新しい整備も進めまして、このエリア一体の連携性を高めて、新しい文化創造発信と植物園や北山の商店街など、憩いの場の相乗効果による発展を目指していきたいというふうに考えております。
周辺地域を含めた連携につきましては、平成26年に周辺の京都工芸繊維大学、北山街協同組合、京都国際会館、上賀茂神社等24施設、団体によって北山文化環境ゾーン交流連絡会議を設立いたしまして、北山ハロウィン等の11月の北山月間の取り組みですとか、本年11月からは陶板名画の庭で京都北山光の庭アートプロジェクトに取り組むなど、今、連携をした事業を進めているところであります。今後は、本当に地域が全部一体となってまいりますので、今まで、例えば植物園の観月の夕べですとか、府立大学の学園祭ですとか、コンサートホールの秋の音楽祭とか、みんなそれぞれの施設ごとに行われていたわけでありますけれども、これをプロムナードや広場を中心にもう一回再構成をして、全体として取り組むような形で一体感をしっかりと造成していくことによって、本当に府民の皆様にとって楽しめて、しかも学べて、そして京都以外の方にも人を引きつけるような場所にしていけたらというように考えているところであります。
また、総合資料館の跡地活用についてでありますけれども、これは本当に北山にとって一番いい場所でありますので、本年1月から跡地活用等検討委員会等で議論を進めているところであります。この議論の中では、北山文化環境ゾーンとして考えたときに、今ある施設にはどのような課題があるのかとか、逆に、そういった中でこの中心地にはいかなる施設が一番ふさわしいのかといったような地域構想と、それから、高度成長のころにさまざまな文化施設をつくってまいりましたけれども、府立文化芸術会館などこうした文化施設の老朽化が進んできて、大変危険な状況になりつつあると。府民の皆さんのためにも、もう一回文化施設を見直して再構築をしていかなければならないという時代的な要請を含めて検討を進めていくべきではないかというふうに考えているところでありまして、今後、府議会の御意見もお聞きしながら、幅広い交流と文化の創出に向けた北山文化環境ゾーンの価値を高める拠点づくりを、財政的な問題もありますから、そうしたものもしっかりと頭に入れながら、調和をどうやってどこでとるのかということも考えながら、検討を加速化させていきたいというふうに考えております。
次に、文化財保護についてでありますけれども、文化財を守っていく上で、私は2つ大きな問題があると思っております。1つ目は、文化財の修理とかその維持について、今はもうがちがちに固められている中で、大変費用が高額となって所有者負担が非常に大きいと。そうした中で、どうも国宝や国の重要文化財に比べて府の指定登録文化財もそれほど数が多くないなど、まだまだ本来指定されなければならない価値の高い文化財が京都の中に多く埋もれているのではないか。そして、それが行政の目の届かないところで、維持・保全の上で非常に危機にさらされているのではないかという問題が一点。もう1つは、さまざまな制約がある中で、こうした文化財が私蔵されてしまっていて、一番大切なのは文化財を活用して次の世代に伝え、新しい文化を生み出していくことが非常に重要なんですけれども、こうした次の世代に生かされた文化財活用ができていないのではないかというこの2つの問題がある。この2つの問題は関連していると思うんですけれども、そうした問題が京都の貴重な文化財にとって大きな危機をもたらしているのではないかというふうに私は考えております。
このため、こうした課題を解消していくために、例えば災害の発生時に、実は道路や農業施設に比べて文化財の補助率は低うございますので、これはきちっとそれなりに上げるべきではないかという要望を国にしているところでありますし、ヨーロッパでは、例えば外観は厳格に保全しながらも中は使う人の便利を考えて、必要に応じて保護水準に差をつけることによって文化財を活用しているような柔軟な制度が普及しておりますので、こうした点、文化庁の移転を踏まえ、文化庁とともに柔軟な手法を検討して所有者の理解を得られるような形で文化財のさらなる保護・継承を図られたりとか、こういうしっかり守る面と活用する面を分けた上で施策をつくっていく必要があるのではないか。さらには、歴史的建造物を活用したイベント開催ですとか、文化財の解説の充実、多言語化ですとか、文化財を活用した観光の振興、または和食の世界発信など、文化首都・京都にふさわしい新しい文化行政を文化庁とともに展開していけたらなというふうに考えているところであります。
41: ◯副議長(巽昭君) 小田垣教育長。
〔教育長小田垣勉君登壇〕
42: ◯教育長(小田垣勉君) 岸本議員の御質問にお答えをいたします。
文化財の保護についてでございますが、後世に残すべき貴重な文化財につきまして、国や府が指定・登録を行い保存を図っているところでございますが、府指定等文化財はその指定の歴史が浅く、議員御指摘のとおり重要文化財と比べ、件数が少ない状況にございます。
〔副議長退席、議長着席〕
そのため、今後指定されていない文化財を保護するためには、まず指定件数をふやしていく必要があると考えております。ただ、指定に際しましては詳細な調査や高度な学術的、専門的な価値評価が必要であるため、例えば災害に備えたり、むやみな現状変更を防ぐために、一定の要件を満たす文化財を緩やかな規制のもとに保護していくような制度など、さまざまな手法を検討してまいりたいと考えております。その上で、今後、体制の充実を図りながら、府指定等文化財の指定や登録の増加に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、文化財の教育分野への活用についてでございますが、児童生徒が有形・無形の文化財について体験的に学習して理解を深めることで、地域の歴史や文化に誇りを持ち、その保護や継承の大切さを認識するとともに、グローバル社会の中でみずからその価値について発信できることを目指す、そんな教育が重要であると考えております。
今年度、京都の歴史を学んでおります鴨沂高校や清明高校の生徒が重要文化財建造物の修理現場を見学し、文化財保護課の職員から直接、説明や指導を受ける取り組みを初めて実施をいたしました。生徒は、歴史的建造物に刻み込まれた卓越した技術を目の当たりにし、先人たちの知恵を学ぶとともに、それを継承することの意義について理解を深めたところでございます。
府教育委員会といたしましては、今後、京都の歴史を学ぶ高校を推進校として選定し、生徒が府内の文化財建造物の保護や地域の伝統芸能の継承などについて学習する京都府ならではの歴史文化教育を積極的に進め、その成果や手法を他の高校に広げてまいりたいと考えております。
43: ◯議長(
植田喜裕君) 岸本裕一君。
〔岸本裕一君登壇〕
44: ◯岸本裕一君 御答弁ありがとうございました。申すまでもなく、京都の文化財は有形のものだけではありません。無形の文化財も大変多うございます。お祭り、地蔵盆、いろいろな風習、祇園の舞妓さんの芸、そういったもの全てが文化財でございます。吉例顔見世興行もその一つです。知事も毎年プログラムに一文書いていらっしゃいます。ことしはごらんになりましたでしょうか。ことしは京都にゆかりのある屋号「京屋」を持つ五代目中村雀右衛門さんの襲名披露も兼ねております。大向うより「京屋」「五代目」というふうな声をかけて、大いにそういう伝統行事も盛り上げていこうではありませんか。こういうことも文化財だと申し上げ、質問を閉じます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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45: ◯議長(
植田喜裕君) 以上で、本日の日程は終了いたしました。明12月6日午後1時から本会議を開きますので、御参集願います。
本日はこれをもって散会いたします。
午後4時42分 散会
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